文京シビックホールを舞台に、人気アーティストたちが奏でる極上のアンサンブルとトークで彩られる「夜クラシック」。来る2026-2027シーズンで13年目を迎える人気のシリーズだ。毎回コンサートの幕開けに、ドビュッシーの名曲「月の光」を演奏するのがこのシリーズのお約束。さまざまなアーティストや編成が生み出す、それぞれの「月の光」の響きを基調として、その「夜」の調べが紡がれてゆく。

大島 亮/植木昭雄
シーズン初回となるVol.41は、ピアノ独奏と弦楽器とのアンサンブルで愉しむショパン。本シリーズの初回から登場している仲道郁代が、ショパンの多様な音楽語法が織り込まれた「バラード」全4曲を披露する。ピアノが物語的な語り口で届けるロマン派音楽の世界に、たっぷりと浸ることができるだろう。そして、ショパンが青年時代に瑞々しい感性で書き上げたピアノ協奏曲第1番を、島田真千子(1stヴァイオリン)、水谷晃(2ndヴァイオリン)、大島亮(ヴィオラ)、植木昭雄(チェロ)という精鋭メンバーによるピアノ五重奏版で届ける。自身も繊細なタッチに優れたピアニストであったショパンは、この室内楽バージョンでの演奏を好んだことも知られている。仲道を中心として5人の呼応が聴かせる、本作の親密な側面に期待が高まる。

Vol.42は、共演を重ねている郷古廉(ヴァイオリン)、横坂源(チェロ)、北村朋幹(ピアノ)が登場。それぞれが持つ鋭敏な感性と美学を互いに研磨させながら、ミステリアスで美しい作品群を届ける。プロコフィエフの洒脱な「5つのメロディ」、武満徹「オリオン」、エネスク「夜の鐘」、そしてピアノ三重奏版のシェーンベルク「浄められた夜」といったプログラミングで、静謐と官能が交差する濃密な夜の世界を描く。

右:上野星矢
Vol.43では、鈴木優人の煌めくようなチェンバロと、上野星矢の伸びやかなフルートによる共演が実現。クープラン「恋の鶯」やヴィヴァルディ「ごしきひわ」といったバロックの名作から、現代的かつ抒情的な吉松隆の「デジタルバード組曲」まで、「鳥」をモチーフに時代を超えて羽ばたく、遊び心あふれる選曲だ。また、グルックのオペラ《オルフェオとエウリディーチェ》からの選曲も、2人のデュオがその世界観を届けてくれることだろう。

右:児玉 桃 ©Lyodoh Kaneko
シーズンの最後を飾るVol.44は、吉田誠のクラリネットと児玉桃のピアノによる色彩豊かなフランス音楽の世界。プーランクとサン=サーンス、それぞれの「クラリネットとピアノのためのソナタ」を取り上げるほか、フォーレの「月の光」が、ドビュッシーのそれとはまた違った輝きを放つことだろう。さらにメシアンのピアノ曲「鳥のカタログ」から、月明かりの夜に鳴くことで知られる〈モリヒバリ〉を取り上げるという洒落たプログラミングにも注目。クラリネットとピアノの色彩感が織りなす、洗練されたフィナーレを期待したい。
夏・秋・冬・春それぞれの夜を、豪華アーティストたちの響きとともに過ごしてみるのはいかがだろうか。どのコンサートも魅力満載かつ人気のため、3月31日までの期間限定販売となっているお得な4公演シーズンセット券もぜひおすすめしたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年3月号より)
文京シビックホール「夜クラシック」 2026-2027シーズン
【Vol.41】2026.7/3(金)
【Vol.42】2026.11/27(金)
【Vol.43】2027.1/22(金)
【Vol.44】2027.3/19(金)
各日19:00 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111
https://www.b-academy.jp

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。

