
今、山下一史は日本で最も多忙な指揮者の一人ではないだろうか。大阪交響楽団常任指揮者(2022年〜)、千葉交響楽団音楽監督(2016年〜)、愛知室内オーケストラ音楽監督(2022年〜)を兼務し、2018年から東京藝術大学指揮科教授のポストにもあり、23年からは藝大フィルハーモニア管弦楽団(東京藝術大学に所属するプロ・オーケストラ)の首席指揮者も務めている。
山下は、桐朋学園大学卒業後、ベルリン芸術大学へ留学し、晩年のカラヤンのアシスタントを務めた。1986年、急病のカラヤンに代わって、ベルリン・フィルでベートーヴェンの「第九」を振ったエピソードはよく知られている。
大阪交響楽団での山下は、彼が得意とするドイツ音楽をレパートリーの中心に据えている。とりわけリヒャルト・シュトラウスの作品は重要である。たとえば、2022年5月の常任指揮者就任披露となった定期演奏会では、シュトラウスの「4つの最後の歌」と交響詩「英雄の生涯」を取り上げた。2024年4月の「関西6オケ!」では、「ばらの騎士」組曲を披露。そして2025年3月の定期演奏会ではオール・リヒャルト・シュトラウス・プログラムを組み、組曲「町人貴族」、交響詩「ドン・ファン」、交響詩「死と浄化」を演奏した。そして今回、4月24日の定期演奏会では、交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を取り上げる。ヴァイオリン独奏が重要な役割を務めるこの曲で、4年前の「英雄の生涯」に引き続き、首席ソロコンサートマスターの森下幸路がソロを務める。パイプ・オルガンも含む大編成の作品での山下の棒さばきが楽しみである。
4月の定期演奏会の1曲目にはシューマンの歌劇《ゲノヴェーヴァ》序曲が演奏されるが、この作品について、山下は思い入れが深いに違いない。というのも、2011年の東京室内歌劇場による歌劇《ゲノヴェーヴァ》の舞台形式での日本初演を指揮したのが山下であった。
演奏会の2曲目にはモーツァルトの交響曲第36番「リンツ」を取り上げる。山下は2025年4月の定期演奏会でオール・モーツァルト・プログラムを組むなど、モーツァルトも好んで手掛けている。また、この日演奏する3作品は、どれもハ長調(ハ短調)を基本としていることでも共通している。
山下&大阪響が得意とする、シューマン、モーツァルト、R.シュトラウスの作品によるドイツ=オーストリア・プログラムは、まさに彼らの新年度の開幕にふさわしいものとなるだろう。
文:山田治生

第287回 定期演奏会 山下一史はかく語りき
2026.4/24(金)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール
※18:45からプレトークあり
シューマン:歌劇 《ゲノヴェーヴァ》作品81 序曲
モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調 K.425 「リンツ」
R.シュトラウス:交響詩 「ツァラトゥストラはかく語りき」 作品30(Solo Vn:森下 幸路)
問:大阪交響楽団072-226-5533
https://sym.jp

山田治生 Haruo Yamada
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。



