
地球は本当にいろいろな意味で狭くなっているのに、来日したことが一度もない一流音楽家は、やはり存在する。
指揮者サー・ドナルド・ラニクルズは、その最たる一人だろう。1954年スコットランド生まれ、指揮者としてのキャリアをドイツの歌劇場で始めた。サンフランシスコ・オペラの音楽監督やベルリン・ドイツ・オペラの音楽総監督を歴任、バイロイト音楽祭やウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場にもドイツ歌劇を中心に継続的に客演している。
オーケストラ指揮者としても、7年間にわたり首席指揮者をつとめたBBCスコティッシュ交響楽団などで、豊富な経験と実績を重ねている。そして、2025年秋から首席指揮者として関係を深めつつあるのが、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団だ。

このオーケストラは、シュターツカペレ・ドレスデンに次ぐドレスデン第2のオーケストラとして、旧東ドイツ時代にはヘルベルト・ケーゲル、近年はマレク・ヤノフスキなどの指揮者に鍛えられ、堅実で保守的なドイツ伝統の響きを残していることで知られる。
名匠ラニクルズの待望の初来日は、この新たなパートナーとともに実現する。曲目はブラームス、マーラーなどラニクルズ得意のドイツ音楽が中心で、「皇帝」では亀井聖矢、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番では樫本大進と、日本の名手たちとの共演も楽しめる。
深く重厚に響く音楽に期待したい。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2026年3月号より)
サー・ドナルド・ラニクルズ(指揮) ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
2026.6/22(月)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
6/23(火)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
6/25(木)19:00 サントリーホール
6/28(日)14:00 横浜みなとみらいホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp
※公演によりプログラムは異なります。全国ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

山崎浩太郎 Kotaro Yamazaki
1963年東京生まれ。演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(以上アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。
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