【WEBぶらあぼ特別インタビュー】ケリー=リン・ウィルソン(指揮)


 長身かつほっそりした女性指揮者、ケリー=リン・ウィルソン。しかし、ひとたびタクトを振り下ろせば、たちまち逞しい響きがあふれ出る。「熱く激しく、陰翳に富んでドラマティックな音楽が大好きです!」と語る彼女、新国立劇場で指揮するオペラ《蝶々夫人》の魅力を新しい観点から解き明かす。
 「《蝶々夫人》のヒロインは可憐な女性ですが、音楽的には重い響きが多いですし、いったん舞台に出ると殆ど下がらずにずっと歌い続けます。男声の役でもここまで要求されるのはヴェルディの《オテロ》くらいではないでしょうか?蝶々さんはいわば、『歌の長い旅路を歩む人』。だから、指揮者である私は、何よりテンポ配分に注意しながら、彼女に十分な息継ぎをさせる必要があります。なお、このオペラでは、指揮者がルバートをかける(テンポを柔軟に変更する)嫌いがありますが、感情に任せて音楽を引っ張ったりオーケストラを鳴らし過ぎたりすると歌い手が最後までもちません。管弦楽は『歌声をスムーズに歩ませるカーペット』のようなもの。音量バランスに注意して、歌手を地道に支えてゆきたいです」


 近代イタリアからワーグナーやロシアものまで幅広く手がけるケリー=リン・ウィルソン。その独自の音楽観はどのようにして育まれたもの?
 「カナダ生まれですが、祖母がウクライナ出身であるからなのか、ムソルグスキーやショスタコーヴィチなどロシア系の響きには自然と魂が震えます!交響曲が好きでジュリアード音楽院で指揮を学びましたが、ザルツブルクでクラウディオ・アバド先生の助手を務めたことも貴重な経験になりました。マエストロの『腕』がそのまま音に転じるさまが忘れられません。音の魔術師と呼びたいぐらいでした。日本で《蝶々夫人》を指揮できることを光栄に思っています。私なりの経験を活かして頑張りますので、ご来場の皆さまも、このオペラで何かしらの新境地を感じて頂ければ幸いです。作曲家プッチーニのプライドを大切にして演奏します。どうぞお楽しみに!」
 
取材・文:岸純信(オペラ研究家)
撮影:M.Terashi(TokyoMDE)

■2013/2014シーズン
オペラ《蝶々夫人》/ジャコモ・プッチーニ
Madama Butterfly/Giacomo Puccini
全2幕〈イタリア語上演/字幕付〉

2014年1月30日(木)19:00、2月2日(日)14:00、5日(水)19:00、8日(土)14:00 オペラパレス
上演予定時間:約2時間45分(Ⅰ幕55分 休憩25分 Ⅱ幕85分)

指揮:ケリー=リン・ウィルソン
演出:栗山民也
美術:島 次郎
衣裳: 前田文子
照明: 勝柴次朗

【配役】
蝶々夫人: アレクシア・ヴルガリドゥ
ピンカートン: ミハイル・アガフォノフ
シャープレス: 甲斐栄次郎
スズキ: 大林智子
ゴロー: 内山信吾
ボンゾ: 志村文彦
ヤマドリ: 小林由樹
ケート: 小野和歌子

合 唱: 新国立劇場合唱団
管弦楽: 東京交響楽団

■チケット
S 21,000円 A 15,750円 B 10,500円 C 6,300円 D 3,150円 Z 1,500円
新国立劇場ボックスオフィス
03-5352-9999
ローソンチケット Lコード:32006

新国立劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/

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