“墨田の道”は一日にしてローマに通ず
レスピーギの「ローマ三部作」は、イタリア人指揮者がいい。トスカニーニ、ムーティ、パッパーノ…と各時代を代表する録音は皆そうだ。イタリア人作曲家が描く歴史や情景の微妙な色合いと香りは、やはり自国の指揮者のみが感知できるに違いない。2月の新日本フィル《新・クラシックへの扉》では、イタリア人指揮者エンリケ・マッツォーラが、レスピーギを軸とした“ローマ尽くし”のプログラムを披露する。これは古都の色調と空気感を満喫できる貴重な機会だ。
今年46歳のマッツォーラは、ミラノ・スカラ座はじめオペラを中心に活躍し、ロンドン・フィルほか多数の著名楽団にも客演。現在はイル・ド・フランス国立管の音楽監督を務めている。日本でも、2000年ミラノ・ピッコロ劇場の《コジ・ファン・トゥッテ》、12年新国立劇場の《ドン・ジョヴァンニ》等で絶賛を博しており、新日本フィルには、10年の「第九」以来の再登場となる。
プログラムは、前半がローマの護民官を描いたワーグナー《リエンツィ》序曲+「ローマの噴水」、後半がベルリオーズ「ローマの謝肉祭」序曲+「ローマの松」の組み合わせ。政治的史実、水のきらめき、賑やかなカーニバルを経て、在りし日の栄華に至る内容は、ローマの多彩な側面を味わえるし、ドイツ人とフランス人が描くローマを自国人の描写と対比できる点も興味深い。明晰で透明感のある音作りと、エキサイティングな高揚感を併せ持つマッツォーラの指揮も、緻密にして華麗な諸作にピッタリ。ここは本場直伝の“ローマ・スペクタクル”を体感しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年2月号から)
新・クラシックへの扉 第35回
★2月7日(金)、8日(土)・すみだトリフォニーホール Lコード:37435
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp