過去と現代の“最先端”に挑む俊英たちのステージ
いま苦境のさなかにある、クラシック音楽界。蔓延したコロナの影響により、多くのステージが中止や延期となるなか、3月にトッパンホールで予定されていた、ドイツの名クラリネット奏者で作曲家でもあるイェルク・ヴィトマンの公演もキャンセルに。しかし、「折々の時代の最先端を疾走する作品の数々を、ぜひ聴いてほしい」と、気鋭の若手奏者たちが、ヴィトマンと藤倉大の作品に、生誕250年のベートーヴェンの傑作を配した意欲的なプログラムを同ホールで披露する。
2002年にジュネーヴ国際音楽コンクール、翌年にリーズ国際ピアノコンクールでともに第3位入賞を果たしたピアノの大崎結真は、20代前半の青年作曲家の瑞々しい才気を感じさせる第1番と、自身の作風を確立した中期の傑作である第23番「熱情」、ともに創意と野心に満ち、作曲当時の聴衆へ衝撃を与えたベートーヴェンの2つのソナタを弾き、プログラムの大枠に。さらに、若き日の藤倉が書いた意欲作「Frozen Heat」(1998)も取り上げる。2017年エリーザベト王妃国際音楽コンクール第2位入賞のチェロの岡本侑也は、藤倉がトッパンホールの委嘱に応えて作曲した佳品「osm〜無伴奏チェロのための」(2015)を弾く。そして、ヴァイオリンの篠原悠那を擁するカルテット・アマービレはヴィトマンの弦楽四重奏曲第3番「狩」を、さらに篠原のソロで「ヴァイオリン独奏のためのエチュード第3番」に挑む。
作曲された時代の感性を切り取った“最先端”の楽曲が、俊英たちの瑞々しい才能と鮮烈なサウンドにより、新たな翼を得る。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2020年12月号より)
*岡本侑也が右手不調のため、本公演は代わって本條秀慈郎(三味線)の出演により、曲目を一部変更して開催されます。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
2020.12/21(月)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com