現代の最前線にいるパーカッショニストが、三善晃のマリンバ独奏のための全作品と協奏曲を収録した意欲的な1枚。過小評価されている感もある三善の業績(の一部)を世界に向けて発信した意義深い録音と言って間違いない。多種多彩な音色とニュアンスこまやかで研ぎ澄まされた表現を併せ持つ鮮烈な演奏は、すべてに聴き応え充分。魅力的な音空間と訴求力抜群の音楽に終始引き込まれ、マリンバの可能性と三善作品の凄さを改めて認識させられる。場の空気感が伝わるリアルな録音も特筆もの。いわゆる“現代音楽”を聴かないファンにもお薦めしたい好ディスクだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年12月号より)
【information】
SACD『三善晃へのトリビュート/加藤訓子』
三善晃:組曲「会話」、トルス Ⅲ、リップル、マリンバと弦楽合奏のための協奏曲、六つの練習前奏曲
加藤訓子(パーカッション)
スコティッシュ・アンサンブル
ナクソス・ジャパン
CKD635 ¥オープン