動き出す日本のオーケストラたち(1)〜様々な課題に取り組み、待望のコンサートを再開

 新型コロナウイルス問題で2020年3月末から公演中止&延期を余儀なくされていた日本のオーケストラが動き出した。密閉、密集、密接の「3密」の条件に照らすと、オーケストラ演奏会では客席だけでなく、舞台上に所せましと並ぶ楽団員の感染リスクも軽視できない。東京都交響楽団(都響)が科学者や医師も交えた公開試演会を6月半ばに開いたのに続き、7月にはNHK交響楽団(N響)が長野県内の空調会社実験施設で埃、飛沫を厳密に分けて精度を上げた形のデータ測定を行う。一方、まず無観客演奏のライヴ配信で健在をアピール、次いで編成、演奏時間、発券枚数に工夫を凝らし、感染防止策を入念に施した上で、有観客演奏会再開に踏み切るオーケストラも増えている。

 下記、公演データをご覧いただければ、全国北から南まで、活動の再開に強い意欲を燃やしている実態がわかるだろう。インターネット社会の進展により、ヴァーチャル(仮想)空間の音楽鑑賞手段が高品位化、多様化している実態は音楽家、聴衆それぞれの活動自粛、在宅(ステイ@ホーム)期間に確かめられたはずだが、いざホール空間の実演と再会すれば生の音が織りなす響き、舞台と客席が一体となってつくる一期一会の音楽体験のかけがえのなさを思い出すにちがいない。

 首都圏のオーケストラが毎年夏、ミューザ川崎シンフォニーホールに集う「フェスタサマーミューザKAWASAKI」は今年、9楽団のコンサートで座席数約600席に限った有観客ライヴとインターネットの有料動画配信の同時進行=ハイブリッドで開催すると発表した。「素晴らしい内容なのに川崎までは遠い」と考えていた地域の音楽ファンを取り込む好機といえ、苦境が生んだ新機軸としても注目に値する。
文:池田卓夫

6月21日開催の東京フィルハーモニー交響楽団 第938回オーチャード定期演奏会より
自粛後、東京で最初のクラシック・オーケストラコンサート再開となった
撮影=三浦興一 提供=東京フィルハーモニー交響楽団

日本のオーケストラ再開!(2020年6月〜9月)
《無観客から有観客への移行、時間短縮&座席数の同時進行への取り組み》

*この情報は2020年6月23日現在のものです。
 変更の可能性もありますので、詳細は各オーケストラのウェブサイトでご確認ください。


■京都フィルハーモニー室内合奏団
6月13日(土)第225回定期公演
(会場:京都コンサートホール)
「室内オーケストラの夏」と題して有観客を実施した。
100人定員に限定、回数を10時30分開演、14時開演の2回に増やした。
http://www.kyophil.com


■日本センチュリー交響楽団
6月20日(土)「ハイドン・マラソンHM.19」
(会場:ザ・シンフォニーホール)
飯森範親指揮の公演を当初の6月12日から8日繰り延べ、曲数を減らし、有観客で開催。
6月29日(月)の第244回定期演奏会(指揮=秋山和慶 会場:ザ・シンフォニーホール)で再開。
https://www.century-orchestra.jp


■東京フィルハーモニー交響楽団

6月21日(日)第938回オーチャード定期演奏会(会場:Bunkamuraオーチャードホール)
6月22日(月)第134回東京オペラシティ定期シリーズ(会場:東京オペラシティ コンサートホール) 
6月24日(水)第939回サントリー定期シリーズ(会場:サントリーホール) 
特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフに代わってレジデントコンダクターの渡邊一正の指揮。
曲目を変更、休憩なし約1時間、入退場自由の公演を人数限定の事前申し込みで開催。
https://www.tpo.or.jp


■東京交響楽団
6月26日(金)第681回定期演奏会
(会場:サントリーホール)
6月28日(日)川崎定期演奏会 第76回(会場:ミューザ川崎シンフォニーホール)
飯守泰次郎指揮の第681回定期で有観客公演を再開。同一プログラムによる川崎定期は「ニコニコチャンネル〈ニコニコ東京交響楽団〉の開設(6月8日)記念でライヴ無料配信。川崎市と組み、ミューザの無観客ライヴ無料配信「川崎市&東京交響楽団 Live from Muza! マッチングギフトコンサート」全3回(6月23日=原田慶太楼指揮、27日=飯守範親指揮、7月3日=井上道義指揮)も同チャンネルで企画。
https://tokyosymphony.jp


■大阪フィルハーモニー交響楽団
6月26日(金)、6月27日(土)第539回定期演奏会
(会場:フェスティバルホール)
大植英次指揮で曲目をR.シュトラウスから「オール・ベートーヴェン・プロ」に変更、休憩なしにして有観客公演を再開。
https://www.osaka-phil.com


■関西フィルハーモニー管弦楽団

6月27日(土)第311回定期演奏会(会場:ザ・シンフォニーホール)
鈴木優人指揮で小編成の曲目に変更し、有観客公演を再開。
https://kansaiphil.jp


■新日本フィルハーモニー交響楽団
7月2日(木)第621回定期演奏会〈ジェイド〉
(会場:サントリーホール)
6月9日に行った試演の結果を踏まえ、下野竜也指揮で曲目を一部変更し有観客公演を再開。
https://www.njp.or.jp


■名古屋フィルハーモニー交響楽団
7月10日(金)、7月11日(土)第481回定期演奏会
(会場:愛知県芸術劇場コンサートホール)
7月3日に太田弦指揮「しらかわシリーズVol.35」を無観客で公演した後、曲目を変更、座席配置と定員見直しを経て、小泉和裕指揮により有観客で定期を再開。
https://www.nagoya-phil.or.jp


■読売日本交響楽団
特別演奏会
7月5日(日)東京芸術劇場コンサートホール  
7月14日(火)、7月21日(火)サントリーホール

7月に3回、短めの「特別演奏会」(5日=鈴木優人指揮、14日=原田慶太楼、21日=小林研一郎)を開き、有観客演奏を再開。
各回30席限定の「ブラボーチケット」は読響オリジナルマスク付き。支援の一部を「読売光と愛の事業団」の「コロナ医療支援基金」へ寄付。
https://yomikyo.or.jp


■日本フィルハーモニー交響楽団
7月10日(金)、7月11日(土)第722回東京定期演奏回
(会場:サントリーホール)
6月10日にサントリーホールと共催の「とっておきアフタヌーン オンラインスペシャル」(広上淳一指揮)無観客ライヴ配信を実施した日本フィルの有観客最初の定期。曲目を休憩なし1時間の内容に変更。1公演あたり900席で再開する。7月13日、30日(以上指揮=井上道義 会場:サントリーホール)、8月1日(指揮=広上淳一 会場:サントリーホール)には特別演奏会を開催予定。
https://www.japanphil.or.jp


■山形交響楽団
■仙台フィルハーモニー管弦楽団
7月12日(日)やまぎん県民ホール
7月18日(土)東京エレクトロンホール宮城

「山響×仙台フィル合同演奏会」(飯森範親指揮)の曲目を変更しての公演。金管セクションによる「祈り」、弦楽合奏による「未来」、管弦楽による「希望」の3部構成で有観客の演奏を再開する。
http://www.yamakyo.or.jp
http://www.sendaiphil.jp


■大阪交響楽団
7月16日(木)第241回定期演奏会
(会場:ザ・シンフォニーホール)
初代音楽監督・常任指揮者の小泉ひろしを29年ぶりに招き、第1回定期演奏会の曲目を再現して有観客の活動を再開する。
http://sym.jp


■日本テレマン協会テレマン室内オーケストラ
7月16日(木)第270回定期演奏会
(会場:大阪市中央公会堂)
延原武春指揮による「ベートーヴェン生誕250周年記念公演 中之島をウィーンに!」で再開。
http://www.cafe-telemann.com


■広島交響楽団
7月17日(金)第402回定期演奏会
(会場:広島文化学園HBGホール)
6月26日の「ディスカバリー・シリーズ5」の無料ライヴ配信公演(下野竜也指揮)を経て有観客公演を再開。高関健の指揮、藤田真央のピアノ。
http://hirokyo.or.jp


■九州交響楽団
7月17日(金)第387回定期演奏会
(会場:アクロス福岡シンフォニーホール)
鈴木優人指揮で曲目を削り、休憩なし1時間に短縮する一方、1席おきの配席にして定員を半分に絞り、有観客の演奏を再開。
http://www.kyukyo.or.jp


■神奈川フィルハーモニー管弦楽団
7月23日(木・祝) 華麗なるコンチェルト・シリーズ第15回
(会場:横浜みなとみらいホール)
川瀬賢太郎指揮で、ベートーヴェンの「運命」をメインに据え、有観客公演の再開を目指す。
https://www.kanaphil.or.jp


■兵庫芸術文化センター管弦楽団
「どんな時も 歌、歌、歌!〜佐渡裕のオペラで会いましょう」
7月23日(木・祝)、7月24日(金・祝)
(会場:兵庫芸術文化センター)
6月19日に「オーケストラ公演の再開に向けて〜ディスカッションとデモ演奏〜」(佐渡裕、下野竜也指揮)をYouTube、Twitter、Facebookでライヴ配信した結果を踏まえ、本来は佐渡プロデュースオペラ《ラ・ボエーム》の公演期間に当たる当日に有観客で開く。5人の歌手が出演する予定。
http://www1.gcenter-hyogo.jp


■京都市交響楽団
7月25日(土)、7月26日(日)第647回定期演奏会
(会場:京都コンサートホール)
秋山和慶指揮で、曲目を休憩なし1時間の内容に変更し、有観客の公演を再開。入場制限に対応するため26日は11時と15時の2回に増やし、2日間3公演とした。
https://www.kyoto-symphony.jp


■東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
8月1日(土)東京シティ・フィルのドラゴンクエスト
(会場:ティアラこうとう)
6月26日に第335回定期演奏会(藤岡幸夫指揮)を無観客ライヴ配信した後、8月1日のティアラこうとうでの公演から有観客の演奏を再開。
https://www.cityphil.jp


■東京ニューシティ管弦楽団
9月4日(金)第3回練馬定期演奏会
(会場:練馬文化センター)
7月4日に開催予定だった公演(内藤彰、神津善行指揮)を9月に延期、有観客公演の再開を目指す。小中学生を無料招待する。
http://www.tnco.or.jp