ニルス・メンケマイヤー(ヴィオラ) モーツァルト・プロジェクト 〜ライナー・クスマウルをしのんで〜

恩師への追悼の思いを込めた二夜 

C)Irene Zandel

 4月のトッパンホール「モーツァルト・プロジェクト」は、“室内楽の殿堂”の面目躍如たる公演だ。中心をなすのはニルス・メンケマイヤー。ドイツ生まれの彼は、自然で温かな音楽を聴かせる“ヴィオラ新世代の旗手”であり、まずはその自在の奏法と豊かな表現力が存分に披露される。さらに本公演は“ライナー・クスマウルをしのんで”と銘打たれている。3年前に逝去した名ヴァイオリニストにして名教師であり、当ホール草創期の恩人でもある偉大な音楽家をしのんで、影響を受けた演奏家を中心とする実力者が集い、モーツァルトを主軸とした名作を二夜にわたって奏でる。それも大きな趣旨だ。

 出演者は、学生時代に感化されたメンケマイヤーの他、直接師事した日下紗矢子と田島高宏、若き日に共演した久保田巧(以上3名ヴァイオリン)、日下の音楽仲間アンドレアス・ヴィルヴォール(ヴィオラ)、卓越した俊英・岡本侑也(チェロ)、メンケマイヤーの盟友ウィリアム・ヨン(ピアノ)という凄腕の名手たち。プログラムは、稀代の名作たる弦楽五重奏曲K.515、516を各日に配し、初日はK.516ト短調、幻想曲ハ短調、ピアノ四重奏曲ト短調等で“モーツァルトの短調”の深淵を抉る。2日目はK.515ハ長調等に、2017年に発見されたショスタコーヴィチの即興曲(要注目!)とヴィオラ・ソナタが続く。作曲者の“白鳥の歌”である同ソナタは、極限まで純化された深遠なる傑作。これはクスマウル追悼の念と同時に、メンケマイヤーによる楽曲の新境地も期待される。この意味深い二夜、共に足を運ばすにはおれない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年4月号より)


*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は延期となりました。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

モーツァルト・プロジェクト1 
2020.4/9(木)19:00
モーツァルト・プロジェクト2 
4/10(金)19:00
トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
http://www.toppanhall.com