広島交響楽団ラインナップ記者発表

左:藤倉 大 右:下野竜也
Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE

広島交響楽団が昨年12月23日、都内で2020年度ラインナップ記者発表を行い、音楽総監督の下野竜也、作曲家の藤倉大らが出席した。

昨年は、ワルシャワで14年ぶりの海外公演を実施するなど、楽団にとって充実の一年となった。被爆75年を迎える今年、「“讃” 〜平和を讃えて〜」をテーマに掲げる。第400回を迎える5月の定期には、下野が終身名誉指揮者の秋山和慶、首席客演指揮者クリスティアン・アルミンクとともに3人で登壇。ベートーヴェン「合唱幻想曲」など記念ガラらしい華やかなプログラムが組まれた(5/24)。11月のプレミアム定期では、下野のタクトでブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」が取り上げられる(11/13, 11/15)。また、記念年であるベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲が定期ですべて聴けるようになっており、ディスカバリー・シリーズ4公演もベートーヴェンにフォーカス。交響曲やその他の管弦楽作品を細川俊夫作品と併置させつつ系統立てて掘り下げる(6/26/, 8/27, 10/2, 12/17)。客演陣のプログラムは、「フランスものや北欧ものもやっていきたい」と話す下野の意向が反映されたラインナップとなった。そのほか、ウラディーミル・フェドセーエフが28年ぶりに広響を振る(ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」)のも大きな話題(12/10)。

毎夏恒例の「平和の夕べ」コンサートでは、会見に出席した藤倉のピアノ協奏曲第4番「Akiko’s Piano」がマルタ・アルゲリッチの独奏で世界初演される(8/5, 8/6)。原爆により19歳の若さで亡くなった河本明子が愛用したアップライトピアノ(被爆ピアノ)を題材とした作品は、カデンツァのみ被爆ピアノ、その他の部分はグランドピアノで演奏される。藤倉によれば、「修復されたピアノにも触れ、明子さんの日記などの資料にも目を通して、カデンツァ部分を作曲した。ストーリーを追ったり、怒りを直接的に表現したりすることはせず、明子さんが元気だった頃に思いを馳せながら書いた」という。

「四分音符ひとつに響きを重ねて良いものを作っていくという作業は地道だが、そこから生まれる響きや達成感は、オーケストラをやっていて良かったと思える瞬間」と熱く語る下野の就任4年目のシーズンに期待が高まる。

広島交響楽団
http://hirokyo.or.jp