結成30年を経て、ますます“深化”するカルテット
東京藝術大学出身者である蒲生克郷、花崎淳生(以上ヴァイオリン)、桐山建志(ヴィオラ)、花崎薫(チェロ)の4名で結成されたエルデーディ弦楽四重奏団。彼らは2005年から第一生命ホールの「クァルテット・ウィークエンド」に出演し、ベートーヴェンやハイドンを中心に意欲的なプログラムを展開。今回はドホナーニの第3番、モーツァルトの第22番にベートーヴェンの第11番を演奏する。ヴァイオリンの二人に話を聞いた。
「昨年からモーツァルトの後期とベートーヴェンの中期をメインに据えるシリーズを開始しました。この2つを核としながら、近代の響きの作品を入れていこうと。そこで今回はドホナーニにしました。彼の弦楽四重奏曲はあまり知られていませんが、とても魅力的な曲です。少し深刻な雰囲気を持ち、響きも非常に新鮮です。かなり複雑な技巧が求められるので、聴きごたえもありますよ」
エルデーディ弦楽四重奏団はこれまでもベートーヴェンを積極的に取り上げてきた。19年3月には第14番と第16番を収めた新譜をリリースしており、彼らにとってベートーヴェンはやはり特別な存在のようだ。
「ベートーヴェンは弦楽四重奏曲というジャンルの頂点を築き上げた存在。彼の、特に後期の作品を弾くことは弦楽四重奏団にとっての目標であり喜びです。これまでは後期の作品を中心に演奏してきましたが、ここで一度、そこに至る中期に注目することにしました。この時期の作品は非常に充実した書法で、特に各奏者の見せ場もあり、お聴きになる方にとって特に楽しめるものだと思います。今回演奏する『セリオーソ』はベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中でも一番短く、さまざまな要素が次々と現れます」
一方で、今回もう一つの“核”となるモーツァルトの後期作品はどうなのだろう。
「チェロに高い音域を演奏することが求められるので、響きが高いところに密集していて、特に有名な《ハイドン・セット(第14〜19番)》に比べれば派手さはありません。しかし精緻な響きの中に精神性の高さが見られますし、各奏者のソロが多く、とても魅力的な作品です。ぜひそれをたくさんの方に知っていただけたら」
エルデーディ弦楽四重奏団は19年に結成30周年を迎えた。これまでも意欲的なプログラムで作品の本質をじっくりと伝える演奏を聴かせてくれたが、今後も様々な構想があるという。彼らの“深化”し続けるアンサンブルと充実のプログラムをぜひ堪能してほしい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2020年1月号より)
クァルテット・ウィークエンド 2019-2020 エルデーディ弦楽四重奏団
〜ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年Ⅱ〜
2020.2/2(日)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
http://www.triton-arts.net