一音ごとに心を込めた謳い回しに、作品に対する誠実さがひしひしと伝わってくる。浜匡子は、東京と長野を中心に活躍する実力派ヴァイオリニスト。3つのソナタにあっては、拍節感やヴィブラート遣いなど、バロックや古典派の基本的マナーはわきまえつつ、安易に流行りのピリオド奏法に寄せはしない。それでいて、例えば、スラーで結ばれた音型をキーワードのごとく浮き彫りにしたり、上拍にスタッカートを穿ったりと随所に独自の創意を施し、魅力的に輝かせる。共演の藤井一興も、理知的な快演。特に、バッハとベートーヴェンの最終楽章で、対位法を際立たせるプレイは巧みだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2020年1月号より)
【information】
CD『浜匡子 ヴァイオリン・リサイタル 藤井一興とともに』
J.S.バッハ:ヴァイオリンとピアノ(チェンバロ)のためのソナタ第2番 BWV1015/モーツァルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第18番 K.301/ベートーヴェン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第9番「クロイツェル」/エルガー:愛の挨拶 他
浜匡子(ヴァイオリン)
藤井一興(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7912 ¥2500+税