弦3本でダイナミックに描き出すオペラの世界
なんとも大胆なグループ名である。しかしメンバーの一人であるチェリストの中木健二が愛知県岡崎市の出身だと聞けば、日本史ファンの方なら納得していただけるだろう。岡崎市は徳川家康の出生地であり、同市シビックセンターのレジデントアンサンブルとして意欲的な活動をしているのがこの弦楽三重奏団なのだ。結成は中木がフランスから日本へと拠点を移した2014年であり、読売日本交響楽団に在籍している長原幸太(ヴァイオリン)と鈴木康浩(ヴィオラ)が参加。室内楽の経験も豊富な3人だからこそ生まれる凝縮感や自由な雰囲気、さらには自信と確信がみなぎっているような演奏を聴かせてくれる。
このアンサンブルが、12月19日にHakuju Hallで行われる「Hakuju サロン・コンサート」で東京に初登場。それぞれの演奏をすでに聴いている方も多いだろうが、室内楽における個々の存在感や音楽性のぶつかり合い、弦楽器ならではの歌心などが聴けるのはうれしい。演奏するのはビゼーの《カルメン》およびモーツァルトの《魔笛》をモティーフに、さまざまなアリアなどを選んで再構成した2つの作品。そしてモーツァルトが1788年夏(後期三大交響曲の完成後!)にウィーンで書き上げた弦楽三重奏のための大作「ディヴェルティメント K.563」だ。
Hakuju Hallという親密な空間に広がる音楽で、3人は天下獲りへ号令をかける。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2019年11月号より)
2019.12/19(木)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp/