チェロの達人・中木健二が、無伴奏で「狂気」を問う。人同士のつながりの薄れた現代社会、芸術作品のもつ「狂気」こそが人の魂に訴えかける、という中木の信念のもと、バロックのマラン・マレと20世紀のカサド、リゲティ、黛敏郎の4人による傑作が選ばれた。完璧無比な技巧、一瞬の隙もない熱量。それでいていささかも荒れることなく、品格すら保ちつつタイトにまとめて、チェロの美音を満喫させる。民俗性も豊かな20世紀の3曲は、あえてユニバーサルなスタンスも保ち、普遍性を増している。現代のヴィルトゥオーゾ像のひとつを伝える、圧巻のパフォーマンス。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年12月号より)
【information】
CD『ラ・フォリア〜狂気のチェロ/中木健二』
マラン・マレ(中木健二編):ヴィオール曲集第2巻より「スペインのフォリア 主題と31の変奏」/カサド:無伴奏チェロ組曲/リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ/黛敏郎:BUNRAKU〜無伴奏チェロのための
中木健二(チェロ)
キングレコード
KICC-1623 ¥3300(税込)