ロシアのオケというと腹にずしりとくる重量感に魅力を感じる人も多いだろう。このコンビはその最右翼で、広大な大地の土の匂いまでが感じられてくる。「1812年」では大河のように滔々と流れる弦が、クライマックスでの爆発的な勝利にまでパワフルに広がっていく。かつてショスタコーヴィチの息子が音楽監督を務めていただけあって、この作曲家の解釈も立派。交響曲第5番は分厚い装甲の戦車のように、磨き上げたサウンドが鈍い光を放ち爆走する。ここぞというところで粗削りになるのも魅力だ。アンコールの「荷馬車引きの踊り」は片田舎の農村の祝祭のようなはじけっぷりで、爽快この上ない。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年12月号より)
【information】
CD『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 他/ポリャンスキー&ロシア国立交響楽団』
チャイコフスキー:大序曲「1812年」/ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」、バレエ音楽「ボルト」より〈荷馬車引きの踊り〉
ヴァレリー・ポリャンスキー(指揮)
ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》
収録:2017年11月、東京オペラシティ コンサートホール(ライヴ) 他
N&F
NF-28803 ¥3000+税