1月のN響はソヒエフが登場、大注目の「レニングラード」

トゥガン・ソヒエフ ©Marco Borggreve

 N響の1月定期は恒例となったトゥガン・ソヒエフの登場。彼は、祖国ロシアのウクライナ侵攻に胸を痛めてボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル管の音楽監督を辞任しながらも、ベルリン・フィル等の著名楽団から引く手数多の名匠で、ここ2年、ウィーン・フィル、ミュンヘン・フィルと来日している点が傑出した手腕を証明している。近年立て続けに客演しているN響でもロシアものをはじめとする多彩な作品で名演を展開。清新な感性や生気を隅々まで湛えた精彩と色彩感溢れる演奏で、多大な感銘を与えている。

 今回最も注目されるのは、ソヒエフの持ち味がフルに発揮されるAプロのショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」だ。1941年に戦火の当地で書かれたこの曲は、中間部の盛り上がりで名高い第1楽章から熱く高揚する第4楽章に至る、巨大な壁画のような音楽。全体主義的な抑圧への反証となる現世に相応しい曲であり、新年最初に置かれた点も意味深い。

 もうひとつ興味をそそるのが、ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」とブラームスの交響曲第1番を並べたCプロ。前者は古いイタリア音楽を換骨奪胎し、後者はロマン派後期に古典を意識して書かれた、“温故知新”的な組み合わせだ。「プルチネッラ」はソヒエフ一流の音色感やリズム感とN響の機能性の融合、 ブラ1は、N響の伝統的十八番であるドイツ音楽の名作に、昨年のウィーン・フィル日本公演でも同曲で魅了したソヒエフが吹き込む新鮮な息吹に期待が集まる。

 共に、極めてエキサイティングな、“ソヒエフ&N響”でこそ聴きたい公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年12月号より)

トゥガン・ソヒエフ(指揮) NHK交響楽団
第2028回 定期公演 Aプログラム

2025.1/18(土)18:00、1/19(日)14:00 NHKホール
第2029回 定期公演 Cプログラム
2025.1/24(金)19:00、1/25(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp