詩情あふれるフランスの宗教曲と劇的音楽を一堂に集めて
東京シティ・フィルは、首席客演指揮者であった矢崎彦太郎とともにフランス音楽のシリーズ(その中にはプーランクの歌劇《カルメル派修道女の対話》もあった)を手掛けていたように、フランス音楽との相性が良いように思われる。現在の常任指揮者・高関健とも、ラヴェルの歌劇《スペインの時》、「ラ・ヴァルス」などで優れた演奏を残してきた。
そしてこの5月、高関の指揮でオール・フランス・プログラムに取り組む。プーランクは洒脱な作風で知られるが、晩年はカトリシズムに傾倒し、「スターバト・マーテル」のような宗教音楽を書いた。今回は進境著しい東京シティ・フィル・コーアの合唱に注目。気鋭のソプラノ、中江早希が独唱を務める。サン=サーンスの描写的な交響詩「死の舞踏」も楽しみ。そして、フォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」とビゼーの「アルルの女」組曲第2番という、劇付随音楽からの曲が続く。「ペレアスとメリザンド」の〈シシリエンヌ〉の優美な旋律は誰もが聴いたことがあるだろう。「アルルの女」は、“名曲”として扱われることが多いが、アルルの雄大な風景を思わせる〈パストラール〉、アルト・サクソフォンが悲哀を帯びた旋律を吹く〈インテルメッツォ〉、フルートの美しい旋律で愛されている〈メヌエット〉、プロヴァンス太鼓も登場し熱狂的に締め括られる〈ファランドール〉と、どれもがビゼーの天才の表れた傑作である。高関&東京シティ・フィルの真摯な演奏で堪能したい。
文:山田治生
(ぶらあぼ2019年5月号より)
第57回 ティアラこうとう定期演奏会
2019.5/11(土)15:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/