レンズを通した世界を描く〜新国立劇場《魔笛》

 10月3日、新国立劇場の2018/19シーズンがモーツァルトのオペラ《魔笛》で開幕する。大野和士オペラ芸術監督による第1シーズンとなる。
 演出は、1980年代末から「動くドローイング」とも呼ばれるアニメーションを制作、『プロジェクションのための9つのドローイング』で世界的な注目を集め「素描とアニメーション等を融合させた新しい表現メディアを創出し、独自の世界を切り拓いた」として2010年京都賞を受賞した南アフリカ出身の現代美術家、ウィリアム・ケントリッジ。その手法は、リヨン歌劇場でのショスタコーヴィチ《鼻》(メトロポリタン歌劇場でも上演)、メトロポリタン歌劇場でのベルク《ルル》等でも発揮され、高い評価を得た。《魔笛》は2005年のモネ劇場を皮切りに、ミラノ・スカラ座、エクサンプロヴァンス音楽祭など世界各国で数多く上演されている。
 指揮は、ミラノ・スカラ座公演でも指揮をとったローラント・ベーア。

 9月7日、同劇場にスタッフが集結し始まった稽古では、演出補のリュック・ド・ヴィッドがケントリッジの考えを代弁する形で、写真や映像を見せながらケントリッジの演出コンセプトを解説した。
(2018.9/7 新国立劇場 Photo:寺司正彦)

右)演出補:リュック・ド・ヴィッド 左)演出助手:島田彌六

【演出コンセプト(抄)】
 舞台は階段状に奥へ続いている。これはタミーノの「旅」を表している。舞台全体は、バロック時代の劇場のように透視図法を用いた絵画(ここではケントリッジによるアニメーションや素描を用いた映像)で空間が創られる。
 舞台前面にはベルトコンベアのようなものがあって、映像にあわせて登場人物が動く。

  舞台は、「様々な発見」があったビクトリア時代に設定している。本作では、初期のカメラが大事なアイテムとなっているが、実用的なカメラが発明されたのもこの頃のこと。
  カメラのレンズは「フリーメーソンの眼」。カメラを通して物事を見、そして、様々な知を得る。映像は、紗幕を通して映ったり、舞台奥のスクリーンに直接映ったりする。登場人物自らが影絵となったり、影絵を創ったり、あるいは、映像と映像に挟まれる形で舞台にいる。
 映像と人物の動き、音楽は完全にシンクロする。

重要なアイテムとなる初期型カメラ

映像オペレーター:キム・ガニング

 稽古初日は、序曲に続く冒頭の三人の侍女のシーンから稽古が始まった。

 三人の侍女がカメラのレンズの前で手を動かすことで、タミーノに襲いかかる大蛇を表す。映像オペレーターのキム・ガニングが操作する背景映像と、歌手たちの手の動きをシンクロさせるのはなかなか難しく、何度も繰り返し稽古していた。

左)侍女III:山下牧子 右)侍女I:増田のり子

左から)侍女II:小泉詠子、侍女III:山下牧子、侍女I:増田のり子

カメラの前で手を動かすことで、スクリーンに大蛇が映し出される

 本公演に関連し、9月10日には、大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.1『魔笛』が行われた。
■大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.1『魔笛』 (ダイジェスト版)

【公演情報】
■新国立劇場 大野和士 芸術監督就任第一作 
2018/2019シーズン開幕公演
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト《魔笛》(新制作)
Die Zauberflöte (The Magic Flute)
2018.10/3(水)18:30
10/6(土)14:00
10/8(月・祝)14:00
10/10(水)14:00
10/13(土)14:00
10月14日(日)14:00
新国立劇場オペラパレス

問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/

指揮:ローラント・ベーア
Conductor:Roland BÖER
演出:ウィリアム・ケントリッジ
Production:William KENTRIDGE
演出補:リュック・ド・ヴィット
Co-director:Luc DE WIT
美術:ウィリアム・ケントリッジ、ザビーネ・トイニッセン
Set Design:William KENTRIDGE, Sabine THEUNISSEN
衣裳:グレタ・ゴアリス
Costume Design:Greta GOIRIS
照明:ジェニファー・ティプトン
Lighting Design:Jennifer TIPTON
プロジェクション:キャサリン・メイバーグ
Projection Design:Catherine MEYBURGH
映像オペレーター:キム・ガニング
Video Operator:Kim GUNNING
照明監修:スコット・ボルマン
Supervisor for the Lighting:Scott BOLMAN

ザラストロ:サヴァ・ヴェミッチ
Sarastro:Sava VEMIC
タミーノ:スティーヴ・ダヴィスリム
Tamino:Steve DAVISLIM
夜の女王:安井陽子
Königin der Nacht:YASUI Yoko
パミーナ:林 正子
Pamina:HAYASHI Masako
パパゲーノ:アンドレ・シュエン
Papageno:Andrè SCHUEN
パパゲーナ:九嶋香奈枝
Papagena:KUSHIMA Kanae
モノスタトス:升島唯博
Monostatos:MASUJIMA Tadahiro
弁者・僧侶I・武士II:成田 眞
Sprecher / Erster Priester / Zweiter Geharnischter:
NARITA Makoto
僧侶II・武士I:秋谷直之
Zweiter Priester / Erster Geharnischter:AKITANI Naoyuki
侍女I:増田のり子
Erste Dame:MASUDA Noriko
侍女II:小泉詠子
Zweite Dame:KOIZUMI Eiko
侍女III:山下牧子
Dritte Dame:YAMASHITA Makiko
童子I:前川依子
Erster Knabe:MAEKAWA Yoriko
童子II:野田 千恵子
Zweiter Knabe:NODA Chieko
童子III:花房英里子
Dritter Knabe:HANAFUSA Erik

合唱指揮:三澤洋史
Chorus Master:MISAWA Hirofumi
合唱:新国立劇場合唱団
Chorus:New National Theatre Chorus
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
Orchestra:Tokyo Philharmonic Orchestra
芸術監督:大野和士
Artistic Director:ONO Kazushi

■新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演《魔笛》
2018.10/29(月)、10/31(水)各日13:00 ロームシアター京都 メインホール
問:ロームシアター京都チケットカウンター075-746-3201
http://rohmtheatrekyoto.jp/event/47581/

■ウィリアム・ケントリッジ スペシャルトーク
2018.9/30(日)14:00〜15:30 新国立劇場オペラパレス ホワイエ
出演:ウィリアム・ケントリッジ(《魔笛》演出・美術) 
聞き手:森岡実穂(中央大学准教授)
料金:入場無料(全席自由)
問:新国立劇場営業部03-5351-3011(代表)

https://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/event.html

■企画展「オペラの扉2018」
2018.9/18(水)〜11/29(木)ロームシアター京都 ミュージックサロン(パークプラザ3階)
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/opera2018/