映画音楽のベスト・セレクションをライヴで披露
独自のピアニズムを確立した演奏家で、日本を代表する作曲家のひとりとしても知られる加古隆。昨年も、今年9月公開予定の日本映画『散り椿』(木村大作監督)の音楽制作に力を注いでいたという。
「映画音楽の場合、基本的なプロセスはいつも同じ。先ず脚本を読んだら、とにかく監督と直に会って話をしてから作曲にとりかかり、最初にサントラの核となるテーマ音楽を完成させる。その段階でデモテープを求められることが多いので、シンセなどを使って作り監督に渡す。ロケを見学に行くと現場でそのテープを流しながら撮影していることが多くて…。今回もそうでしたね(笑)。その後は映像が全て出来上がるまで待ち、それを貰ってから約1ヵ月の間に集中して書き上げます」
3月にはその最新作『散り椿』を筆頭に加古の名旋律を一堂に集めたコンサートを開催。演奏は2010年に結成した、自らピアノを務める「加古隆クァルテット」の面々だ。
「ピアノ・ソロでは再現できないオーケストラ曲も、クァルテットなら最小の人数で最大限の音楽表現が可能なので、映画音楽はグループ立ち上げ当初から頻繁にとりあげてきました。今回は全プログラムを4人で演奏する初めての公演で、僕なりに選りすぐったベスト・セレクションをお届けしたいと思います。クァルテット・ファンにはお馴染みの曲もあれば、自分でも結構お気に入り曲でありながらこれまでオーケストラとピアノでしか演奏したことのなかった『大河の一滴』のテーマ曲など、初披露の曲もあります」
映画音楽が中心だが、他にもNHKスペシャル『映像の世紀』や山田太一ドラマ『キルトの家』のために書いた楽曲など代表作の数々も網羅。
「『パリは燃えているか』をはじめとする『映像の世紀』の音楽は前回のツアーでも高い好評をいただきましたが、今回は一連の組合せを変えたので新たな流れを楽しめるはず。『熊野古道』も最近久しく演奏していなかったので喜んで貰えたら嬉しいですね。カウンターテナーのスラヴァに委嘱された〈アヴェ・マリア〉などもお楽しみに」
欧州で「目にも耳にも美しい」と絶賛されたステージは、メンバー4人の立ち位置にも強いこだわりが…。
「ピアノとチェロを挟み、両サイドに女神のような佇まいでヴァイオリンとヴィオラを立たせることで、アンサンブルとしての一体感を保ちつつ、それぞれの楽器の個性を際立たせることができる。視覚的な美しさが不思議と理想のサウンドを生むんですね。ぜひ会場で体感して下さい!」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2018年2月号より)
加古 隆 concert 2018『クァルテット・ベスト』
加古 隆 クァルテット 映画音楽セレクション
2018.3/4(日)14:00 サントリーホール
問:キョードー東京0570-550-799
http://www.kyodotokyo.com/
他公演
2018.2/11(日・祝)大阪/いずみホール
2018.2/12(月・休)名古屋/三井住友海上しらかわホール
2018.2/18(日)函館市芸術ホール
2018.3/1(木)札幌コンサートホールKitara(小)
※全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.takashikako.com/