至高の室内楽 MOSTLY KOICHIRO vol.3

世代を超えた親密かつ濃密な室内楽

 “豪華にして、懐かしくも新しい、本格的な室内楽”─『至高の室内楽 MOSTLY KOICHIRO』をひと言で表せば、こうなるだろうか。1969年に結成した東京クヮルテットの第1ヴァイオリン奏者として活躍後、桐朋学園等で教鞭をとりながら多彩な活動を続けてきた原田幸一郎が、古い仲間や若い世代の奏者たちと行う同公演のvol.3が、7月に開催される。今回のメンバーは、東京クヮルテット結成時からの盟友ヴィオラ奏者・磯村和英、30年にわたって読響のソロ・チェリストを務めた毛利伯郎のベテラン勢と、97年ハノーファー国際コンクール優勝の神谷美千子、2007年チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子という原田に学んだヴァイオリン・ソリストたち。それに神尾の夫で同年のチャイコフスキー国際コンクール最高位受賞のピアニスト、ミロスラフ・クルティシェフが加わる。ちなみに日本勢は桐朋とジュリアードの在籍経験者。つまり屈指の実力者たちが、同門ゆえの統一感と、世代や立場を異にするがゆえの新鮮さを併せ持ったアンサンブルを聴かせる。
 演目は、原田が「人生の中で想い出深い」と語る3曲だが、モーツァルトの「ハイドン・セット」唯一短調の弦楽四重奏曲第15番、シューマンの死に因んだブラームスの劇的なピアノ四重奏曲第3番、重厚かつ緻密で奥深いフランクのピアノ五重奏曲と、全て短調のシリアスな作品ばかり。“仲間たちの集い”的な緩さなど微塵もない内容だし、濃密さが半端ない。これは、クルティシェフが与える化学反応を含めて、注目すべき室内楽公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年6月号から)

7/14(金)19:00 紀尾井ホール
問:アスペン03-5467-0081 
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