オッコ・カム(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

フィンランドの巨匠が贈るオール・シベリウス・プログラム

オッコ・カム ©Markus Henttonen
オッコ・カム ©Markus Henttonen
 かくも早く、再びオッコ・カムが振るシベリウスを聴けるとは! その喜びを抑えることができない。10月の神奈川フィル定期で、カムがシベリウスの交響詩「フィンランディア」、交響曲第7番、第1番を指揮する。1946年フィンランド生まれの彼は、69年の第1回カラヤン国際指揮者コンクールで優勝後、主に北欧の団体で地に足の着いた活動を続け、世界各地にも客演しながら熟成度を高めてきた。そして昨年11月日本で、2011年からの手兵ラハティ響と共にシベリウスの交響曲全曲を披露。曲想の変化を自然体で表出すると同時に、濃密な有機体となった音が雄弁に語る感動的名演を展開し、真の巨匠たることを実感させた。
 特に感銘深かったのが、最終日の交響曲第7番とアンコールの「フィンランディア」。今回はまずこれらを前半で聴けるのが嬉しい。「フィンランディア」は、シンパシーに充ちた“本物”の高揚感が、聴き慣れた耳を一新させること必至。幻想的かつ凝縮された究極の交響曲といえる第7番では、昨年魅せた清澄さと強靭さと緻密さを相持つ表現で、その真価を伝えてくれるであろう。旋律美に溢れた国民楽派的な交響曲の第1番は、有名な第2番以上に親しみやすい名作。これもスケールの大きな構築の中にロマンと民族色を漂わせた演奏で、曲の魅力を再認識させてくれるに違いない。
 フレッシュな勢いを増している神奈川フィルが、いかに応えるか? も、むろん大きな見どころ。何より最初と最後の交響曲、つまり作曲者25年の変貌を本場の巨匠のタクトで体感できる本公演は、シベリウス・ファンならずとも必聴だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

第323回 定期演奏会
10/15(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
http://www.kanaphil.or.jp