多彩な楽友たちが集う、北九州の秋の華やぎ
29回の歴史を誇る北九州国際音楽祭が、今年も充実の内容で開催される。テーマは「親愛なる、楽友たちへ──」。以下、多彩な公演の一部をご紹介しよう。
音楽祭のオリジナル企画の中でも大規模な公演が、『マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ』(10/16)。北九州市出身のN響コンサートマスター・篠崎史紀をはじめ、プロ楽団の奏者によるマイスター・アールト組と、オーディションで選ばれた優秀な若手演奏家たちによるライジングスター組を合わせた総勢50名が、交歓しながら作り上げる、“この日しか聴けない”コンサートだ。指揮者を置かずに、篠崎のもとで丁々発止のリハーサルを重ねた、自発性溢れる演奏は魅力十分。今年はベートーヴェンの交響曲第1、8、7番で、リズムがフレッシュに躍動する。
米元響子(ヴァイオリン)、上村文乃(チェロ)、菊池洋子(ピアノ)によるピアノ三重奏も、注目の企画(11/12)。いずれも著名コンクールで受賞した実力派だが、拠点を異にしながら内外で活躍する米元、菊池と、期待の俊英・上村が組む機会は滅多にないので、実に興味深い。今回は、米元&菊池、上村&菊池のデュオを聴かせた後、ブラームスの名作、ピアノ三重奏曲第1番を披露。ソリストたちの協調とスリリングな応接が楽しみだ。
日本人で初めて「ドイツ宮廷歌手」の称号を授与されたバリトン歌手・小森輝彦のサロン・コンサートも目を引く(10/20)。小森は、ドイツの歌劇場を拠点にザルツブルク音楽祭など欧州各地で歌い、リートでも本場の聴衆の支持を受けてきた本格派。ブラームスの「『美しきマゲローネ』からのロマンス」をじっくり聴けるのも嬉しい。
海外組の中でも豪華なのは、ダニエル・ハーディング&パリ管弦楽団(11/23)。今秋音楽監督に就任した名門楽団からハーディングが引き出す清新な音楽への期待は大きい。演目も、東日本大震災当日に新日本フィルと演奏した、彼の思いのこもるマーラーの交響曲第5番と、名手ジョシュア・ベルがソロを弾くメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲だから文句なし!
ソロでは、ピアノのユリアンナ・アヴデーエワ(10/30)。彼女は、2010年ショパン国際コンクール優勝以来、高い技巧と知的かつ情感豊かな表現で、独自の個性を確立しており、今回のバッハ、ショパン、リストも、耳を引き付けて離さないこと請け合いだ。
このほか、超絶ホルン奏者ラデク・バボラークのモーツァルト・プログラム(11/20)、地元が生んだ人気ヴァイオリニスト・南紫音のリサイタル(12/3 エクストラ・コンサート)、藤原道山の尺八アンサンブル・コンサート(10/29)、さらには教育プログラム、市民企画等々、ラインナップは多士済々。この機会に皆こぞって、楽友たちと触れ合おう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
10/16(日)〜11/23(水・祝) 北九州市立響ホール、アルモニーサンク北九州ソレイユホール、西日本工業倶楽部 他
問:北九州国際音楽祭実行委員会事務局093-663-6567
http://www.kimfes.com