20世紀の傑作2曲と「チャイ5」を併せた好選曲
10月の都響定期Cシリーズでは、下野竜也がチャイコフスキーの交響曲第5番を軸にしたプログラムを披露する。仕事ざかりに差し掛かった下野が都響をリードし、この超有名曲をどう料理するか見ものだが、抜群の選曲力を生かしたプログラミングにも注目だ。
はじめにペンデレツキ「ポーランド・レクイエム」より、弦楽合奏のための「シャコンヌ」。「ポーランド・レクイエム」はもともとペンデレツキが祖国ポーランドのために犠牲になったり国に尽くした人々を追悼した大作で、1984年に初演された。「シャコンヌ」はローマ教皇ヨハネ・パウロ2世を悼み2005年になって追加された楽章で、不安と悲嘆の入り混じったセンチメンタルな気分に貫かれている。
続いて今年没後20年を迎える武満徹の「ア・ストリング・アラウンド・オータム」。フランス革命200周年記念行事「パリの秋」フェスティバルの委嘱で1989年に書かれた。武満トーンは、ここでドビュッシー、ラヴェル、メシアンなどに連なるフランス風の甘美な夢の世界に変容する。独奏ヴィオラを務めるのは、都響のソロ首席・鈴木学。リンツ・ブルックナー管の首席を経ての現職で、ソロや室内楽奏者としても知られる名手だ。
どちらの曲も心に染み入るような美が格調高く歌われている。かつて前衛の旗手とも見られていた二人の作曲家から、芸術の秋にふさわしい内省を具えた曲を選ぶしたたかさ。さらに哀愁を帯びた旋律が勝利の凱歌へと変わるチャイコフスキーの5番と組み合わせたあたりに、下野らしいホスピタリティ精神が表れている。現代音楽に開眼する一日になるかも!?
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
第816回 定期演奏会 Cシリーズ
10/15(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp