
文:編集部
2026年10月、NHK交響楽団が創立100周年を迎えた。1926年に新交響楽団として発足して以来、日本のオーケストラ界を牽引してきたN響。その1世紀にわたる歩みを貴重な写真で辿る記念写真集『写真で聴く N響100年 響きの軌跡 #1926-2026』が刊行された。
本書は、N響が2015年から進めてきた「アーカイブ・プロジェクト」をもとに編纂されたもので、長年にわたり蓄積されてきた膨大な写真の中から100年の歴史を物語るものを厳選。これまで一般に公開される機会のなかった写真も数多く含まれている。
ページを彩るのは、歴代の指揮者やソリスト、そしてN響の楽団員たち。黎明期を支えた近衛秀麿をはじめ、カラヤン、サヴァリッシュ、スウィトナー、ブロムシュテット、デュトワ、そして現在の首席指揮者ファビオ・ルイージに至るまで、N響と関わりを持った世界的な音楽家たちの姿が収められている。




特筆すべきは、単に演奏家の記録を集めた写真集ではないということ。時代ごとに変化する演奏会の風景や、音楽を取り巻く社会の空気感も感じ取ることができる。N響の100年は、日本のオーケストラ文化の発展の歴史でもあり、写真を通してその変遷をたどることで、今日の豊かなクラシック音楽文化がどのように築かれてきたのかを改めて感じとることができるだろう。
そして「写真で聴く」というタイトルの通り、ページをめくるたびに、そこから当時の音楽が響いてくるような心地がする。さらに、N響の歩みは、その演奏に親しんできた人々の人生とも重なり合う。かつて足を運んだ演奏会、心を揺さぶられた名演奏、憧れの音楽家の颯爽たる姿。写真の一枚一枚が、その日、その瞬間の記憶を鮮やかによみがえらせてくれる。
全192ページに刻まれた100年の軌跡。そこに何を見出し、どんな思いを呼び起こすかは人それぞれだ。見る人の数だけ異なる楽しみ方があり、何度でもページを開きたくなる。N響の歴史を伝える記録であると同時に、一人ひとりの音楽体験に寄り添う、実に味わい深い一冊である。

『写真で聴く N響100年 響きの軌跡 #1926–2026』
定価|4,000円(税込)
判型|B5判変形横型並製・192ページ
発行日|2026年10月
編者|写真で聴く N響100年 刊行委員会
発行所|クマテツ・カンパニー
発売所|株式会社 実業之日本社
https://kumatetsu-nhk100.pages.dev/
