東京フィル定期デビュー! ウィーン・フィル首席ファゴット奏者ソフィー・デルヴォーが「吹き振り」とブラームスで魅せる指揮者としての現在

©Marco Borggreve

 ソフィー・デルヴォーは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を務める現代屈指のファゴットの名手だが、近年は指揮活動にも注力し、世界各地のオーケストラに客演している。2027年1月には東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会にデビューし、ウェーバーのファゴット協奏曲の吹き振りのほか、モーツァルトの歌劇《魔笛》序曲とブラームスの交響曲第1番を指揮する。

 ウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団する前は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席コントラファゴット奏者を務めていたデルヴォーは、数多くの名指揮者たちと音楽を共にしてきた。そうした経験は、彼女の指揮活動にも大いに生かされているという。

 「オーケストラの一員として、指揮者と対峙する時間には多くの学びがあります。リハーサルが上手くいくときとそうでないときには、どんな違いがあるのか。響きや音色のイメージを的確に伝えるためのジェスチャーや、演奏者にストレスを与えない言葉遣い、表情はどんなものなのか。私は日々のリハーサルを分析して、自分が指揮をする際の参考にしています」

 オーケストラのプレイヤーとしても最前線に立つデルヴォーだが、指揮者との役割の違いやその切り替えに戸惑うことはないのだろうか。

 「オーケストラでは絶えずアンサンブルの一部分を担っているので、指揮者として前に立つときには、完全に頭を切り替えなければなりません。とはいえ、指揮者もファゴット奏者も同じ音楽家ですから、仕事の本質が変わるわけではなく、自分の異なる側面に光を当てるようなものです。指揮者は多くのことを自分で決められるので、その点では指揮をしているときの方が自由です」

 今回の公演では、ソリストと指揮者の役割を同時にこなす、吹き振りも披露される。選ばれたのは、ファゴット奏者にとって欠くことのできないレパートリーのひとつである、ウェーバーのファゴット協奏曲である。

 「この曲は私の最愛のコンチェルトで、オペラ作曲家らしい歌心がなにより魅力的な作品です。ファゴットの独奏には高度なテクニックとロマンティックな表現力が求められます。コンパクトに凝縮された作品なので、初めて聴く方にも楽しんでいただけるはずです」

 プログラムの後半に取り上げられるブラームスの交響曲第1番は、デルヴォーがウィーン・フィルやベルリン・フィルで繰り返し演奏してきた作品だ。東京フィルとの初共演にこの作品を選んだ狙いを聞いた。

 「私のルーツであるフランスの作品を選ぶことも考えましたが、最初の共演では、私と東京フィルの双方がよく知るブラームスの交響曲に取り組むことにしました。第1番は深淵な響きと和声の移ろいが本当に美しい作品で、会場のひとつであるサントリーホールの音響とも相性が抜群です。様々な楽器に大きなソロがあって、名手揃いの東京フィルと演奏するのに、なによりふさわしい作品でしょう」

 東京フィルは、デルヴォーが所属するウィーン・フィルと同様に、オペラのピットでも活躍するオーケストラである。そうした楽団の特質にも、彼女は大きな期待を寄せている。

 「ピットの中で、オーケストラはいつも歌手の歌に注意深く耳を傾けています。そうした経験は、オーケストラの音楽表現に豊かなニュアンスとフレキシビリティをもたらすのです。《魔笛》序曲のようなオペラの音楽はもちろんのこと、ウェーバーのコンチェルトでも、東京フィルのピットで培われたソロを引き立たせる力が存分に発揮されると思います。ブラームスの第1番では、彼らの親密なアンサンブルが音楽に奥行きと広がりを与えてくれるはずです」

 オーケストラの心理を深く理解しているデルヴォーは、東京フィルの持つ多様な引き出しを巧みに活かしながら、ドイツ・オーストリア音楽の真髄を照らし出してくれるだろう。管楽器とオーケストラ、どちらのファンにとっても聴き逃せない演奏会となる。

取材・文:八木宏之

(ぶらあぼ2026年10月号より)

ソフィー・デルヴォー(指揮・ファゴット) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1040回 サントリー定期シリーズ

2027.1/21(木)19:00 サントリーホール
第179回 東京オペラシティ定期シリーズ
1/25(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522

https://www.tpo.or.jp


八木宏之 Hiroyuki Yagi

青山学院大学文学部史学科芸術史コース卒。愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士前期課程(修士:音楽学)およびソルボンヌ大学音楽専門職修士課程(Master 2 Professionnel Médiation de la Musique)修了。
2021年春にWebメディア『FREUDE』を立ち上げ。クラシック音楽を中心にプログラムノートやライナーノーツ、レビュー、エッセイを多数執筆するほか、アーティストへのインタビュー、コンサートのプレトーク、講演会なども積極的に行なっている。
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