
1949年の創設以来、数多くの名手を世に送り出してきた名門「ブゾーニ国際ピアノコンクール」。近年、コンクールのあり方を根底から問い直す試みとして注目されるのが、世界の主要都市で展開される予選会「Glocal Piano Festival」だ。予選でありながら“フェスティバル”と銘打たれたこのステージの最大の特徴は、聴衆が審査員を務める点にある。2日間にわたり全演奏を聴いた来場者の投票によって、2027年8月のイタリア・ボルツァーノ本選への出場者が決まる。この画期的な舞台の日本会場として選ばれたのが、音響の素晴らしさと、知的で独創的なプログラミングで知られるTOPPANホールだ。
同ホールのプログラミング・ディレクター西巻正史氏は、先立って開かれたシンポジウムで「技術的な巧みさだけを追求するのではなく、音楽を深く愛し、客席に感動を届ける真の表現者こそが求められている」と語り、技術偏重の風潮や、単に順位を競うコンクールのあり方に警鐘を鳴らした。予選を地域に開かれた音楽祭とし、聴衆とともに音楽家を見出す本企画は、まさにその問いへの実践といえる。
ステージに立つのは世界選抜の12名(日本からは畠山咲菜、前川愛実が登場)。濃密な空間で聴き手の心に火を灯すのは誰か。形式的な採点ではなく、未来を切り拓く真の芸術家を自らの耳で見極め、感動を呼び覚まされた奏者への確かな一票で世界へ送り出す——その特別な瞬間に、ぜひ加わってほしい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年11月号より)
第66回 ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選会
Glocal Piano Festival 2026 at TOPPANホール
2026.11/16(月)、11/17(火)各日18:30 TOPPANホール
問 TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。
