ギタリスト・河野智美による次なるリサイタルは、名曲×新作、そして意外なコラボも……⁉

©Fukaya Yoshinobu

 温かな音色で聴き手を魅了するギタリスト河野智美が、自身初となる小品名曲アルバム『ラグリマ』のリリースを記念してリサイタルを行う。

  「いつか名曲集のアルバムを、と思っていたものの、名曲には名演がありすぎるので、私があえて録音する意味があるのかなと若い頃は思っていました。ですがそうした曲を演奏するとお客様の反応がすごくいいんです。皆さんの喜ぶ顔を見るうち、今の私だからこそ名曲から伝えられるものがある、と思うようになりました」

 数ある名曲から収録したのは「リラックスできる曲」「クラシックギターって本当にいいなと感じられる曲」であり、さらに河野自身にとってどれも思い出深い作品だという。

  「たとえば『ラグリマ』は、私が幼い頃、母が聴いていたラジオで流れていたんです。『アラールの華麗なる練習曲』は、私の最初の師匠、横尾幸弘先生が写譜してくださった曲。万年筆で書かれた温かみのある譜面は、今でも大切に持っています」

 思い出の詰まった小品が並ぶプログラムの中で異彩を放つのが、気鋭の作曲家・萩森英明の委嘱新作初演である。

  「萩森さんは今をときめく作曲家。アンサンブルのアレンジでたびたびお世話になっていて、いつも素敵に仕上げてくださるので、今回ぜひ、と新作をお願いしました。でき上がったのが『Sospiri〜ため息〜』。萩森ワールド全開の幻想的な作品になりました」

 作曲家への新作委嘱は、昨年のフレデリック・ハンド「ファンタジー」に続いて2度目となる。

  「私のために作ってくださった作品は、“お守り”のようなものなんです。自分の中の音楽が広がり、演奏活動の原動力にもなっています。新作委嘱は今後も継続できればと思います。ささやかながらギター界に、私らしい何かを残していきたいです」

 さらにスペシャルゲストの出演が決定! 新内浄瑠璃の人間国宝・鶴賀若狭掾、三味線の鶴賀伊勢吉、日本舞踊の花柳貴比とのコラボレーションで、芥川龍之介『蜘蛛の糸』を上演する。新内浄瑠璃とは、人形を使わない素浄瑠璃で男女の物語を描く伝統芸能。鶴賀若狭掾と河野は2017年のスペイン公演以来たびたび共演している縁で、今回のコラボレーションが実現する。

  「錚々たる皆様がいらしてくださることになりました。若狭掾さんは、物語の人物の情感そのままに自在に歌われる方で、そこにギターが “合いの手”を入れるイメージです。感情を表す音をいかに鳴らすか、今ギターのいろいろな音を探っているところです。邦楽は五線譜を越えた世界。十二音の間の音に粋があるんですよね。邦楽とコラボできて幸せです」

 名曲と新作、そして新内浄瑠璃。さまざまな角度から「クラシックギターって本当にいいな」としみじみ感じる一晩となるに違いない。

取材・文:榊原律子

(ぶらあぼ2026年11月号より)

河野智美 ニューアルバム発売記念 ギターリサイタル
ラグリマ〜名曲は、記憶のように響く。
11/6(金)19:00 王子ホール
問 ムジカキアラ03-6431-8186
https://www.musicachiara.com

SACD『ラグリマ』
アールアンフィニ
MECO-1093(2枚組)
¥4950(税込)
10/21(水)発売


榊原律子 Ritsuko Sakakibara

東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了(音楽学)。編集プロダクション勤務を経て、2004年よりフリーランスのライター・編集者として音楽・舞台芸術のジャンルを中心に活動。各地の劇場やホールの友の会会報誌・情報誌の編集制作に長年携わる。現在はアーティストへのインタビュー、公演プログラムの編集、曲目解説の執筆などを行っている。