【CD】「赤い鳥」に寄せて /三縄みどり&黒田祐貴&松下倫士

大正期に鈴木三重吉が刊行した児童雑誌『赤い鳥』に掲載された童謡は、誰しも聴いたことのある名曲ばかりだ。オペラや歌曲で活躍する2人の歌手による、癖のない自然体の歌が曲の奥深さに肉薄しているのがいい。たとえば、コミカルな歌詞なのに、ホラー感のある短調で歌われる〈なつめ〉のディープすぎる世界観。北原白秋の詩による〈雨〉は、弘田龍太郎と成田為三が作曲した2作品が収められている。前者のじめっとした暗さと後者のほの明るいアンニュイ感を的確に表現する三縄みどり。黒田祐貴は〈あわて床屋〉では喜劇的な名調子で、〈この道〉ではしっとりとした抒情で歌い分ける。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2026年11月号より)

【information】
CD『「赤い鳥」に寄せて/三縄みどり&黒田祐貴&松下倫士』

山田耕筰:あわて床屋、この道/弘田龍太郎:雨、なつめ/成田為三:雨 他

三縄みどり(ソプラノ)
黒田祐貴(バリトン)
松下倫士(ピアノ/編曲)

オクタヴィア・レコード
OVCL-00926 ¥3520(税込)


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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