長年の信頼が生む、音楽のアンサンブル──円光寺雅彦と山崎伸子が贈る東京フィル「渋谷の午後のコンサート」

左:円光寺雅彦 ©K.Miura
右:山崎伸子 ©武藤 章

 東京フィルの「午後のコンサート」は、親しみやすい名曲を名指揮者のトークとともに楽しむ人気企画。第31回「渋谷の午後のコンサート」では、円熟のタクトと巧みなトークで人気の円光寺雅彦が登場し、「チェロ弾きの休日」の題でスッペ、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、ドヴォルザークの傑作を演奏する。

 しばしば「人間の声にもっとも近い楽器」と呼ばれるのがチェロ。その深く温かみのある音色は、オーケストラの楽器としても独奏楽器としても、独自の魅力を放つ。今回のプログラムではそんなチェロが大活躍。スッペの《詩人と農夫》序曲では、チェロのソロが伸びやかな旋律を奏でる。メンデルスゾーン(小林幸太郎編)の「無言歌」は、チェロ・アンサンブル用の編曲で演奏される。原曲はチェロとピアノのための作品だが、この日のソリストである名手、山崎伸子が東京フィルの奏者たちとアンサンブルをくりひろげる。

 チャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」はチェロとオーケストラのために書かれた屈指の人気曲。優美で流麗な楽想がこの楽器の華やかな技巧で彩られる。ソリストの山崎伸子と指揮の円光寺雅彦の夫婦共演だけに、息の合った演奏を披露してくれることだろう。ドヴォルザークの交響曲第8番でもチェロは大切な役割を担う。第1楽章冒頭の愁いを帯びた旋律や、第4楽章のファンファーレに続く穏やかな主題の味わいはチェロならでは。その豊かな響きに注目しながら、名曲を楽しみたい。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2026年8月号より)

東京フィルハーモニー交響楽団 第31回 渋谷の午後のコンサート チェロ弾きの休日
2026.9/13(日)14:00 Bunkamuraオーチャードホール
問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 https://www.classicajapan.com/wn/