
笹沼樹とヨハネス・モーザー、探究心あふれるふたりのチェリストの初共演が、10月にヤマハホールで実現する。きっかけは、ともにヤマハのサイレントチェロの新モデルのアンバサダーを務めていたことだった。
「モーザーさんといえば世界中を飛び回るソリストで、どんな曲も軽々と演奏してしまう高い機動力をもち、さまざまなことにパッションをもって活動するチェリストというイメージ。まだお会いしたことはなく、電話で話しただけですが、この夏にヨーロッパでお会いして、今回のプログラムについて打ち合わせをする予定です」
プログラムには、エレン・リードとアニー・ゴスフィードという現代の作曲家がモーザーのために書いたエレクトリック・チェロの作品が入っている。
「現代作品の初演も多く手がけるモーザーさんですが、エレクトリック・チェロの作品を集めたアルバムを出していらっしゃることは、今回はじめて知りました。『僕のアルバムの中で気に入った曲があったら弾いていいよ』と言っていただいたので、サイレントチェロのデュオで演奏できたらと思っていますが、細かいところはまだ何も決まっていないんですよ(笑)。僕にとっては、サイレントチェロも従来のアコースティック・チェロの延長線上にあって、クラシック作品をひと味違ったカッコいいテイストで演奏できる楽器という認識ですが、モーザーさんはエレクトリック・チェロというまったく新しいジャンルを確立しているところが面白いですね」
そのほか、バリエール「2本のチェロのためのソナタ」とパガニーニ「ロッシーニの《モーゼ》の主題による変奏曲」はアコースティック・チェロによるデュオ、マーク・サマー「ジュリー・オー」と黛敏郎「BUNRAKU」はサイレントチェロで演奏する予定とのこと。
「アコースティックの2曲は、モーザーさんと弾いてみたい曲ということで僕から提案させていただきました。パガニーニはソロのパートはA線だけで弾くという技巧的な作品ですが、ソロと伴奏のパートを互いに交換して弾こうと思っています。マーク・サマーと黛も、サイレントチェロで弾いたらどんな感じだろう? という僕の個人的興味からプログラムに入れてみました」
笹沼はこれまでにもヤマハホールでサイレントチェロを使ったコンサートを行っており、試行錯誤しながら音響を作り上げていく実験場として、機材もスタッフも揃っているヤマハホールほど素晴らしい場所はないと語る。
「1曲ずつ演奏するというより、プログラム全体でひとつの舞台作品のような、没入感を体験していただけたらと思っています。ここでしか聴けないコンサートに、ぜひご期待ください」
取材・文:原 典子
(ぶらあぼ2026年9月号より)
珠玉のリサイタル&室内楽
笹沼樹 & ヨハネス・モーザー チェロデュオ・コンサート
2026.10/22(木)19:00 ヤマハホール
問 ヤマハ銀座店インフォメーション03-3572-3171
https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/hall

原 典子 Noriko Hara
音楽ジャーナリスト/編集者/ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、フリーランスに。坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。2021年にWebメディア『FREUDE』を立ち上げる。アーティスト・インタビューやレビュー記事執筆のほか、公演プログラムや企業オウンドメディアの編集、コンサートの企画運営などを行なっている。鎌倉在住。
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