
若手陣の台頭目覚ましい弦楽四重奏の世界に、またもや期待のグループが登場する。この9月、若手実力派を中心に公演を行っている東京文化会館の「シャイニング・シリーズ」でデビューするのが「カルテット・エーレン」。ヴァイオリンが、上昇顕著なソリスト・戸澤采紀とバンベルク響の1st奏者・島方瞭、ヴィオラがなんと読響コンサートマスターの戸原直、チェロが2019年ミュンヘン国際音楽コンクールの優勝以来、ソリストとして活躍を続ける佐藤晴真という、極めて豪華な四重奏団である。「エーレン」とはドイツ語で「時代」の複数形。4人ともドイツに縁がある点と、時代を跨いで様々な作品に取り組みたいとの思いから名付けられたという。ともかく顔ぶれを見ただけでワクワクするようなグループだ。
今回のプログラムは、ハイドンのop. 74-1、ヤナーチェクの「ないしょの手紙」、ベートーヴェンの「ラズモフスキー第3番」。同形態の原点の1つである18世紀作品、進化系ともいえる20世紀作品、王道中の王道たる19世紀作品と、グループ名およびその主旨をまさしく具現した、興味津々のラインナップが用意されている。しかも、テクニカルな名作揃いの内容(中でも「ラズモフスキー第3番」の終楽章は大注目!)に、名手が居並ぶグループの持ち味が生かされている。
弦楽四重奏は時間をかけた練り上げがモノを言うジャンル。彼らも今回は「長い道のりのスタート地点」と位置付けている。この鮮烈なカルテットが今後いかなる進化を遂げていくのか? その記念すべき第一歩にぜひとも立ち会いたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年7月号より)
Music Program TOKYO シャイニング・シリーズVol.18
カルテット・エーレン(弦楽四重奏)
2025.9/5(金)19:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp