
右:ダニエル・ロザコヴィッチ ©Sasha Gusov
かつては「指揮者は60歳でようやく一人前」などと言われたものだが、近年の音楽界はすっかり様変わりして、次々と若い指揮者が頭角を現している。それにしても「2000年生まれの指揮者」がNHK交響楽団の定期公演に招かれるとは驚くほかない。
その新星の名はタルモ・ペルトコスキ。指揮者王国フィンランドの出身だ。ヨルマ・パヌラ、サカリ・オラモに師事し、ハンヌ・リントゥ、ユッカ゠ペッカ・サラステ、エサ゠ペッカ・サロネンといった同国の名指揮者たちの指導を受けた。2022年にドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者に抜擢されると、あっという間にラトヴィア国立交響楽団音楽監督兼芸術監督、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団音楽監督への就任が発表された。いったいなにが起きているのかと戸惑うほどの勢いだが、よほどの才能の持ち主なのだろう。すでにドイツ・グラモフォンからドイツ・カンマーフィルを指揮したモーツァルト・アルバムをリリースしており、その才気は録音からも伝わってくる。
今回、N響との共演にあたって用意されたプログラムは、ダニエル・ロザコヴィッチのソロによるコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲と、マーラーの交響曲第1番「巨人」。スウェーデン出身のロザコヴィッチも早くから神童として注目された逸材だ。世紀末ウィーンが育んだふたりの作曲家の傑作に新時代の才能が挑む。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年6月号より)
タルモ・ペルトコスキ(指揮) NHK交響楽団
第2041回 定期公演 Cプログラム
2025.6/20(金)19:00、6/21(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド 0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp