
この4月で新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督として3シーズン目を迎える佐渡裕。シーズン開幕の定期演奏会では恩師レナード・バーンスタインの作品を中心としたプログラムに平和への祈りを込める。
メイン・プログラムは交響曲第3番「カディッシュ」。オーケストラに朗読、ソプラノ、混声合唱、児童合唱が加わる大作だ。朗読を務めるのは日本を代表する女優、大竹しのぶ。その存在感は確実に作品の印象を新たにすることだろう。ソプラノは佐渡からの信頼も厚い高野百合絵。晋友会合唱団、東京少年少女合唱隊が加わって、万全の布陣が敷かれる。
「カディッシュ」とは「聖なるもの」を意味するユダヤ教の祈りの歌。バーンスタインはこの交響曲を1963年に完成させた。完成目前でジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されたことから、作品はケネディ大統領の思い出に捧げられている。神との対峙、信仰のゆらぎと回復をテーマに、さまざまな様式の音楽が一曲に混在する野心作だ。佐渡はこの作品を繰り返し取り上げており、かつてはフランス放送フィルと、近年ではトーンキュンストラー管とレコーディングを重ねている。
あわせてバーンスタインの「ミサ」から3つのメディテーション(チェロ独奏:櫃本瑠音)、ベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番が演奏される。「レオノーレ」序曲第3番はかつてバーンスタインが「広島平和コンサート」で「カディッシュ」と組み合わせた作品。佐渡にとって忘れられない公演だという。今回も多くの人々の記憶に残る演奏となるにちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年3月号より)
佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団
第662回 定期演奏会
〈トリフォニーホール・シリーズ〉
2025.4/19(土)14:00 すみだトリフォニーホール
〈サントリーホール・シリーズ〉
2025.4/20(日)14:00 サントリーホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
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