
日本の四重奏団体のなかでも、特別な存在感をもつウェールズ弦楽四重奏団。昨年はサントリーホールのチェンバーミュージック・ガーデン「ベートーヴェン・サイクル」を担当し、どの団体とも違う世界観を築き上げて、大きなインパクトを与えた。
その彼らが後進に様々なことを伝えたいと考え、第一生命ホールと共に開始したのが「ウェールズ・アカデミー」である。彼らが選抜した若手団体に、なんと半年以上の長期間にわたりレッスンを行う。重要なポイントを4人が多彩なアプローチで指摘し、伝え、何より考えさせる。筆者も前2回の同アカデミーのレッスンを取材して、プロはここまで緻密に作り上げるのかと畏怖すら覚えたが、アカデミー生の演奏は確実に変化し、細かい気付きを積み重ねることでむしろ「表現の自由」につながっていくことも実感でき、目から鱗が落ちる思いだった。
最終日に“師弟”によるガラ・コンサートが行われるのも、本アカデミーの大きな特長。今回のアカデミー生は、桐朋学園大学・大学院の在学・修了生のクァルテット・リコルドと、東京藝術大学大学院在学中のクァルテット・アチェロ。彼らが奏でるのは、前者がベートーヴェン第5番、後者がシューマン第3番。長い指導と思考を経た、名作の清新な演奏に大いに期待したい。そしてウェールズは、ブラームス第2番で“模範演奏”を行う形になる。本作は彼らの2009年デビュー公演でも取り上げた作品で、あえてここで選んだ意味合いと共に、彼らならではのブラームスの真髄を示す。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年3月号より)
クァルテット・ウィークエンド2024 – 2025
ウェールズ弦楽四重奏団 ~ウェールズ・アカデミー ガラ・コンサート
2025.3/9(日)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net