坂本光太(テューバ)のパフォーマンスが聴取のあり方を問う 〜 東京オペラシティ B→C

 戦後の前衛音楽が行った実験の一つに、パフォーマンス概念の拡張——演奏に音楽以外の行為を組み込むことで音楽を異化する——という方向性があり、マウリツィオ・カーゲルやヴィンコ・グロボカールといった作曲家がこれを推し進めた。

 テューバ奏者・坂本光太は2016年、ルツェルン・フェスティバル・アカデミーに参加した際、グロボカール作品に出会い魅了され、その分析で博士号を取得するほどのめり込んだ。また一方で、様々なジャンルのアーティストとコラボすることで、テューバのレパートリーのみならず21世紀のパフォーマンス音楽の領域を開拓している。

 3月のB→Cはそんな坂本のユニークな経歴が生きた演奏会になりそうだ。まずはバッハを2曲(カンタータ第12番『泣き、歎き、憂い、怯え』BWV12からシンフォニア、ソナタ ト短調 BWV 1030b)演奏した後、テューバや自身についての語りと演奏を組み合わせた久保田翠「あるチューバ/テューバについての物語」、自分の体のほくろの位置から音符を立ち上げた山﨑燈里「黒い帯」と続き、すでに共演経験もある演出家・和田ながらと坂本の共作による新作へとつなげる。

 そこから演者が楽器を演奏しながら床に寝そべるカーゲルのシアター・ピース「アーテム(呼吸)」、テューバにサクソフォンのマウスピースや笛、ファゴットのリードなどを取り付けるグロボカール「エシャンジュ(交換)」といった前衛音楽の古典を演奏して閉じる。

 コンサートにはピアノの杉山萌嘉、演出の和田の他に二人のパフォーマー(長洲仁美、山﨑燈里)も参加。異色のB→Cになりそうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年3月号より)

東京オペラシティ  坂本光太(テューバ)
2025.3/18(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp