神戸市室内管の3月定期は、英国の実力派ジョゼフ・ウォルフのタクトで

左:ジョセフ・ウォルフ
右:笠川 恵 ©Miyuki Miyamoto

 神戸市室内管弦楽団の3月定期は、英国の指揮者ジョセフ・ウォルフがお国にちなんだプログラムを聴かせてくれる。

 弦楽四重奏と弦楽合奏が協奏するエルガー「序奏とアレグロ」に続き、ヴィオラの笠川恵がイギリスの作曲家サリー・ビーミッシュの独奏曲「グランツ(輝き)」を演奏する。笠川はフランクフルトを拠点とする現代音楽団体アンサンブル・モデルンの奏者をはじめとして国際的に活躍している。自身もヴィオラを弾くビーミッシュの作品は、楽器の音域を生かした息の長い哀歌だ。

 続いて笠川のソロに神戸市混声合唱団も加わり、ヴォーン・ウィリアムズの組曲「野の花」が演奏される。これは聖書の雅歌のイメージに基づく6つの楽章からなる作品で、オーボエと独奏ヴィオラが呼応して幻想的に始まり、合唱は終始ヴォカリーズ(母音唱法)で天界のような美しさを描きだす。知られざる名作だ。

 最後に置かれるのはシベリウスの交響曲第3番。イギリス・プロになぜフィンランドのシベリウスなのか? イギリスでは管弦楽曲の創作の大きな波が20世紀になってやってくるが、それに先行して大きな人気を得ていたのがシベリウスだった。交響曲第3番はそんなシベリウスの転機になった作品で、全体を三楽章にまとめ編成を簡素化、一方で主題を緊密に構成するなど、それまでのロマン派風の規模感を圧縮して密度を高めている。ウォルフは自らもヴァイオリン奏者として豊富な経験を持っているだけに、精鋭揃いの神戸市室内管弦楽団からどんなサウンドを引き出すかに注目したい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年3月号より)

ジョセフ・ウォルフ(指揮) 神戸市室内管弦楽団
第166回 定期演奏会「In Flower」 
2025.3/15(土)15:00 神戸文化ホール
問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349 
https://www.kobe-bunka.jp/hall/