ウィーン・フィル&ベルリン・フィル&コンセルトヘボウ管
名門楽団を各本拠地で聴く 豪華11日間の旅

クラウス・マケラ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 (c)Eduardus Lee

文:池田卓夫

 郵船トラベルが企画する「ヨーロッパ名門オーケストラめぐり」の旅は、5月のゴールデンウィーク後半に日本を出発、わずか1週ほどの間にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団をそれぞれ本拠(フランチャイズ)のホールで聴き、アムステルダムのマーラー・フェスティバルに参加するブダペスト祝祭管弦楽団もコンセルトヘボウで聴ける中身の濃いツアー。別途手配公演にもウィーンの他のオーケストラ演奏会やウィーン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場、オランダ国立歌劇場のオペラ上演が盛りだくさんに用意されている。先立つ4月の復活祭期間の「バーデン・バーデン イースター音楽祭&ウィーン10日間の旅」ではベルリン・フィルを2人の指揮者で聴き比べることができる。

黄金のホールで体感するウィーン・フィルの“今”

 5月4日はウィーン・フィルを本拠の楽友協会(ドイツ語で「ムジークフェライン」)大ホールで聴く。リトアニア出身の指揮者ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(1986年生まれ)、中国出身のピアノ独奏者ユジャ・ワン(1987年生まれ)とも女性という人選が、ウィーン・フィルの「今」を象徴する。米国の人権団体などの抗議に対応、同楽団が女性に門戸を開いたのは1997年。現在は20人以上とメンバーの4分の1近くが女性で、アルベナ・ダナイローヴァはコンサートマスター・チームの一角を担う。

 コンサートの冒頭には指揮者と同国人のこれまた女性の作曲家、ラミンタ・シェルクシュニーテ(1975年生まれ)の弦楽オーケストラと打楽器のための「真夏の歌」が置かれている。ユジャは名曲中の名曲、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番で華麗なパフォーマンスを披露するはず。後半はシベリウスの組曲「レンミンカイネン」から第1曲〈レンミンカイネンと島の乙女たち〉、第2曲〈トゥオネラの白鳥〉、第4曲〈レンミンカイネンの帰郷〉の3曲。

ウィーン楽友協会 (c)WienTourismus/Paul Bauer

円熟の巨匠がベルリン・フィルと奏でるマーラー後期の傑作

 5月8日はベルリン・フィルを本拠のフィルハーモニーで。指揮はダニエル・バレンボイム(1942年生まれ)。1992~2023年の長きにわたってベルリン国立歌劇場音楽総監督(GMD)を務めたが、ベルリン・フィルとの付き合いはさらに長く、フィルハーモニー完成翌年の1964年に新進ピアニストとして協奏曲のソリストを務めてから61年、1969年に初めて指揮台に立ってからでも56年を数える。アルゼンチン出身のロシア系ユダヤ人としてマーラーの音楽にも深い共感を寄せ、今回は、未完に終わった交響曲第10番の第1楽章アダージョ、実質は管弦楽つき声楽曲の「大地の歌」と、後期の2曲を指揮する。後者の独唱はハンガリーのメゾソプラノ、ドロティア・ラング(1986年生まれ)とドイツのテノール、ベンヤミン・ブルンス(1980年生まれ)が担う。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (c)Monika Rittershaus(バーデン・バーデン音楽祭より)
ベルリン・フィルハーモニー

 ベルリンでマーラー後期の響きに浸った後はアムステルダム・コンセルトヘボウ(オランダ語で「コンサートホール」の意味)の「マーラー・フェスティバル」に移動、初期の交響曲2作を聴く。10日はフランチャイズのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)と2027年から首席指揮者になるフィンランドの俊英クラウス・マケラ(1996年生まれ)の共演。メインは「巨人」の愛称で知られる交響曲第1番。前半にはRCOとパリ管弦楽団、国際マーラー財団がスウェーデンを代表する作曲家アンデシュ・ヒルボリ(1954年生まれ)に共同で委嘱した新作管弦楽曲を組み合わせた。マケラとRCOの先行きを占う興味深い機会だ。翌11日はハンガリーから客演するイヴァン・フィッシャー(1951年生まれ)指揮ブダペスト祝祭管弦楽団で交響曲第2番「復活」。フィッシャーは父も兄も従兄弟も指揮者という一家の出身。1983年に自ら創設して以来、一貫して音楽監督を務める祝祭管との密度の濃い演奏には定評があるが、そこに70代の円熟が加味されたパフォーマンスを期待できる。独唱はソプラノのクリスティアーネ・カルク(1980年生まれ)、メゾソプラノのアンナ・ルチア・リヒター(1990年生まれ)と今をときめくドイツ人オペラ歌手2人が務め、オランダ放送合唱団と共演する。

コンセルトヘボウ 大ホール (c)Hans Roggen
コンセルトヘボウ (c)Hans Roggen

せっかくなのでオペラも!
もっと聴きたい方にオススメ、充実のオプション公演

 ウィーンでは楽友協会大ホールで音楽監督の佐渡裕が指揮するトーンキュンストラー管弦楽団&反田恭平(ピアノ)でモーツァルトのピアノ協奏曲第23番とこれまたマーラーの交響曲第5番(5月4日昼)、イスラエルの新進ラハフ・シャニ指揮ウィーン交響楽団とヴィキングル・オラフソン(ピアノ)によるバーンスタイン&ジョン・アダムズのアメリカ音楽特集(4日夜)。ウィーン・コンツェルトハウス大ホールではコンサートマスターのジョヴァンニ・グッツォ(ヴァイオリン)の弾き振りにエレーヌ・グリモー(ピアノ)が加わるカメラータ・ザルツブルクのブラームス特集を5日に聴ける。ベルリン・コンツェルトハウス小ホールでは6日夜、1998年にプラハ芸術アカデミーで結成され2005年の第5回大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門で優勝したチェコのべネヴィッツ弦楽四重奏団と、長くハーゲン弦楽四重奏団のヴィオラに君臨してきたヴェロニカ・ハーゲンの共演がある。オペラではウィーン国立歌劇場のクリスティアン・ティーレマン指揮《ローエングリン》(ヨッシ・ヴィーラー演出、5/4)、ベルリン国立歌劇場のニコラ・ルイゾッティ指揮《トスカ》(アルヴィス・ヘルマニス演出、5/6)、オランダ国立歌劇場のマルク・アルブレヒト指揮《影のない女》(ケイティ・ミッチェル演出、5/10)が、それぞれ過激な舞台づくりで知られる演出家の制作で面白そうだ。

ウィーン国立歌劇場
ベルリン国立歌劇場

音楽だけじゃない!
五感で感じる文化都市の魅力

 音楽の都ウィーンは20世紀初頭まで約500年にわたってヨーロッパに君臨したハプスブルク帝国の首都だけに美術館、庭園、劇場、シュテファン大聖堂をはじめとする教会など見どころも満載だ。ベルリンにはコンサート&オペラのハイカルチャーだけでなく、アンダーグラウンドのパフォーマンスも溢れ、活気がある。アムステルダムは運河の街の潤いに富む。自由時間には、レンブラントの「夜警」で有名な国立美術館やゴッホ美術館などでの絵画観賞も楽しみたい。また、2025年の第二次世界大戦の終結80周年にちなみベルリン・ユダヤ博物館、アムステルダムの「アンネ・フランクの家」を訪れるのは意義深い。

シュテファン大聖堂
ウィーン市立公園 ヨハン・シュトラウス像
ベルリン大聖堂
アムステルダムを流れる運河(イメージ)

郵船トラベル
ヨーロッパ名門オーケストラめぐり! ウィーン&ベルリン&アムステルダム 11日間

<2025年5月3日出発>
残席僅少
旅行期間:2025.5/3(土・祝)~5/13(火)
出発地:東京
日数:11日間

問:郵船トラベル 音楽・美術ツアー専用デスク03-6774-7940
https://www.ytk.jp/music/