
2025年は日本と韓国が「日韓基本条約」を締結し、国交正常化してから60周年の節目となる。そこでこの3月、韓国のKBS交響楽団と東京フィルハーモニー交響楽団の合同オーケストラによる特別演奏会が、東京とソウルで開催される。指揮は韓国出身で東京フィル名誉音楽監督/KBS響桂冠指揮者のチョン・ミョンフン。そして両国の若き才能がソリストを務める。これは、日韓の友好関係の発展と平和の継続を願った、極めて意義深いコンサートだ。

東京フィルと20年以上ポストを持つマエストロ・チョンによる絆も深き演奏は周知の通り。一方1956年韓国放送公社(KBS)によって設立されたKBS響は、高水準の演奏で同国音楽界を牽引し、チョン・ミョンフンも第5代首席指揮者を務めている。今回は、両楽団と関係が深い世界的マエストロが、そのコラボからいかなる化学反応を生み出すか?が第一のポイント。マエストロはさらに広範囲のアジア・フィルを創設し、一体感十分の名演を展開しているだけに期待は大きい。

前半はモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲。2017年ヴァン・クライバーン国際コンクールで優勝した韓国のソヌ・イェゴンと、22年ジュネーヴ国際音楽コンクールで第3位に入賞した日本の五十嵐薫子がソロを弾くので、各々の才腕と稀少な競演に注目したい。そして後半はマーラーの多彩な人気作、交響曲第1番「巨人」。マエストロも得意の演目ゆえに、感動的な熱演の予感が漂う。ここは、二つの“オーケストラ=社会”が一つになった音楽を聴いて、友好関係の重要性を再確認したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年2月号より)
日韓国交正常化60周年記念
KBS交響楽団 & 東京フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会
2025.3/2(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp