「食と温泉の国」山形を拠点とし、「山響」の愛称で、全国においても強い存在感を示している山形交響楽団。2019年に阪哲朗が常任指揮者に就任してからも意欲的なプログラムの公演や試みが行われており、常に進化し続けるオーケストラとしてますます注目が集まっている。
山響の変化を象徴するものとしてまず挙げられるのは、オペラへの取り組みだろう。「やまがたオペラフェスティバル」と題し、やまぎん県民ホールでこれまで《セビリアの理髪師》、《フィガロの結婚》、《ラ・ボエーム》を上演して大好評を得てきた。阪は1995年にブザンソン国際指揮者コンクールを制した後、ベルリン・コーミッシェ・オーパー専属指揮者、アイゼナハ歌劇場やレーゲンスブルク歌劇場の音楽総監督などを歴任してきた世界的オペラ指揮者だ。そんな阪が牽引する、演奏会形式オペラシリーズの第3弾は《トスカ》。登場人物たちの揺れ動く感情やドラマティックな展開が、歌唱はもちろん、スケールの大きなオーケストラのサウンドによっても描き出されていく。タイトルロールに森谷真理、カヴァラドッシに宮里直樹、スカルピアに黒田博と日本を代表する歌手が揃い、今回も注目を集める公演となることは間違いない。
第一線で活躍中の指揮者やアーティストが招かれ、魅力的なプログラムが楽しめる定期演奏会も見逃せない。第322回定期には準・メルクルが初登場。ロイヤル・オペラやメトロポリタン歌劇場、さらにフィラデルフィア管、ミュンヘン・フィルなどでもその手腕を振るってきたマエストロだ。彼が今回山響と奏でるのはメンデルスゾーンが改訂を重ねた意欲作、交響曲第5番「宗教改革」にストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲を中心としたプログラム。迫力あるサウンド、多彩な音色などオーケストラの様々な魅力を楽しむことができる内容となっている。
共に古典派作品のスペシャリストである仲道郁代と鈴木秀美の共演が実現する第323回定期は、ベートーヴェンとシューベルトによるプログラム。仲道がソリストとして奏でるのはベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番だ。ロマン派への扉を開いた抒情性にあふれた作品であり、仲道の作品に対する深い愛情が美音となり響きわたることだろう。鈴木と山響のタッグによるベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」からの抜粋とシューベルトの交響曲第6番も要注目。鈴木の作り出す品格あるサウンドで二人の作曲家の音楽の本質に迫ることができるはずだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2024年12月号より)
やまぎん県民ホールシリーズ2024 Vol.4 演奏会形式オペラシリーズIII
プッチーニ:歌劇《トスカ》
2025.2/2(日)15:00 やまぎん県民ホール
第322回 定期演奏会
2025.2/22(土)19:00、2/23(日・祝)15:00 山形テルサホール 2024.12/23(月)発売
第323回 定期演奏会
2025.3/15(土)19:00、3/16(日)15:00 山形テルサホール 2025.1/15(水)発売
問:山響チケットサービス023-616-6607
https://www.yamakyo.or.jp