セバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団

渾身のプログラムで感じる充実のコンビネーション

左:セバスティアン・ヴァイグレ ©読響
右:クリスティアン・テツラフ ©Giorgia Bertazzi

 常任指揮者ヴァイグレと読響の蜜月っぷりが止まらない。その成果をヨーロッパの聴衆にアピールすべく、彼らは10月下旬にドイツと英国の8都市を巡る欧州公演ツアーを行う。ベルリンやロンドンなどで披露するプログラムが、この定期公演と名曲シリーズ(10/3)の曲目を組み合わせたものになる。決め技が詰まった演奏会だ。

 一曲目は、「サロメ」から〈7つのヴェールの踊り〉。ヴァイグレが得意とするリヒャルト・シュトラウスの作品ではなく、伊福部昭の舞踊曲だ。アルト・フルートによるソロから、ワルツを交えたオスティナートによる狂乱を独特な色彩で描いてくれよう。

 続くブラームスのヴァイオリン協奏曲では、ソリストにクリスティアン・テツラフを迎える。かつては怜悧なスタイルで知られたが、近年は作品の内部にぐっと入り込んだ演奏を行うヴァイオリニストとして、ブラームスを弾く。繊細さと力強さが渦巻き、フレーズごとに表情を変化させる豊饒なブラームスを奏でてくれること、間違いない。

 そして、マエストロがもっとも好きな交響曲だというラフマニノフの交響曲第2番。乾いた色彩を効果的に使って、鮮やかかつ骨太に描くダイナミックな演奏が期待できる。これまでもロシア作品に並々ならぬ意欲を見せてきたヴァイグレの本気度もうかがえよう。

 日本をアピールする作品に、ソリストに第一人者を迎えたドイツ王道の協奏曲、そしてヴァイグレの勝負曲たるロシアの交響曲。彼らの「現在」を味わうには絶好のプログラムだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年9月号より)

第642回 定期演奏会
2024.10/9(水)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp