トンチエ・ツァン(指揮) 東京交響楽団

次世代のスターたちがフレッシュに描く珠玉の名曲

左:トンチエ・ツァン ©Harald Hoffmann
右:ティモシー・リダウト ©Jiyang Chen

 9月の東京交響楽団の東京オペラシティ公演が興味深い。

 まず、ティモシー・リダウトがウォルトンのヴィオラ協奏曲を弾くこと。英国出身のリダウトは世界的ヴィオラ奏者として人気・実力共に屈指の名手。子どもの頃には歌に夢中だったとのことで、ヴィオラを奏でても喜びにあふれる歌心、そして圧巻の名技で聴く人を惹きつける。20世紀イギリスのウォルトンの本協奏曲は、独特の哀愁に満ちた旋律と鮮烈な技巧性がヴィオラの魅力を最大限に引き出し、ウォルトン一流の洒落たオーケストレーションも光る逸品で、近年は演奏機会も増加。この母国の傑作をリダウトが弾く、絶好の機会だ。また、今年度の東響はヴィオラとの共演が多く、その流れでも楽しめるし、ヴィオラファン以外にもインパクトの大きい体験になるはず。

 そして、台湾出身の指揮者トンチエ・ツァンが登壇し、ドイツの王道名曲を聴かせること。まだ40代前半のツァンは、2015年マルコ国際指揮者コンクール優勝、近年はドイツを中心に活躍し、21年からはボーフム交響楽団音楽総監督を務める。日本では18年に東京シティ・フィル定期に出演し、キレと愉悦に満ちたハイドン、巧みな語り口で鮮やかなレスピーギの快演を実現。それ以来の東京の舞台は、マーラー編曲のJ.S.バッハ「アリア」で開始。メインはドイツ音楽のど真ん中、ブラームスの交響曲第1番。ツァンの巧みなバトンと独自の解釈が東響から明瞭なサウンドを引き出し、発見の多い新鮮な演奏になるに違いない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年9月号より)

東京オペラシティシリーズ 第141回
2024.9/28(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp