オーケストラを通してYAMAGATAを世界へ!

メンバーが語る山形交響楽団の魅力とこの先への期待

取材・文:長井進之介 写真:編集部

「食と温泉の国」山形のオーケストラである山形交響楽団。「山響」の愛称で、全国においても強い存在感を示している。2019年に阪哲朗が常任指揮者に就任してからはさらに意欲的なプログラムの公演やさまざまな試みが行われており、常に進化し続けるオーケストラとしてますます注目が集まっている。今回は、そんな最近の山響について、団員目線でのお話を聞いた。ご協力いただいたのは太田涼平さん(トロンボーン首席)、豊田泰子さん(第1ヴァイオリン)、常盤紘生さん(ティンパニ&パーカッション首席)の3名。まずは阪が常任指揮者に就任してからの山響の変化について尋ねた。

太田涼平さん

太田「私が入団した頃は飯森範親さんが音楽監督を務められていて、“パワフルな山響”という印象でした。阪さんに変わってからは、その力強さに華やかさ、歌心が加わり、また新しい魅力が生まれたと感じています」

豊田「私はちょうど阪さんに変わってすぐのころに入団しましたので、それまでと比べて…ということができないのですが、以前ある指揮者がゲストでいらした際、“山響はシンフォニーも歌うように弾くのですね”と仰っていました。これはオペラもお得意とされている阪さんの音楽性が団員にも浸透している証拠なのかなと思います」

常盤「私はまだ入団して1年と数か月で、山響が初めて所属したオーケストラなので、豊田さんよりも比較が難しいのですが(笑)…、そもそも阪さんは私が留学していたウィーン国立音楽大学の大先輩であり、自分にとって神のような存在でした。共演させていただけること自体がとても嬉しかったですし、阪さんはヨーロッパ各地で指揮をされており、その音楽的経験を私たちに共有してくださるので、毎回それがすごく勉強になっています」

豊田泰子さん

山響はオペラを積極的に取り上げるほか、新曲の演奏にも積極的な姿勢を見せるなど、非常に意欲的なプログラミングが特徴の一つである。

太田「チャイコフスキーの交響曲など、王道のものもやりますが、そうでない作品も本当に多く取り上げますね。また少人数ならではの音楽づくりというのも特徴だと思います。王道の曲をやるとしても、人数が少ないからこその密度の高さや繊細さをお届けできているかなと。これを活かしてこれからの様々な楽曲に臨めるのが楽しみです」

豊田「少人数だからこそ、《グラスハーモニカのためのアダージョとロンド》など、他のオーケストラではめったに扱われないようなものも演奏できたり、14型など大型の弦楽器編成で奏でられるブラームスも魅力ですが、山響では8型、もしくは10型でやるので、違った表現ができとても面白いです」

常盤「古典やバロック作品をよく扱っているのも大きいですね。ピリオド楽器も積極的に使っていて、私もバロックティンパニを演奏する機会もいただけるなど、なかなかできない経験をさせてもらっています」

常盤紘生さん

山響はコロナ禍のあいだも「音楽を止めない」ことをモットーにベートーヴェン交響曲全曲演奏を2020年7月から開始。わずか3カ月という期間で交響曲5曲を収録し、「CURTAIN CALL」で配信した他、「Music Library Project」と題し、県下全図書館・学校に演奏を収録したDVDを寄贈するなど、意義深い活動を行っている。団員の皆さんにとって印象に残っているのはどんな公演だろう。

太田「どれか一つの公演…というよりは、やはりコロナ禍に行った演奏会全般ですね。次々と公演が中止となり、“この先どうなるか”という不安のなか無観客で公演を開始しましたが、初めて有観客公演を行ったときの感動はとても大きかったです。声を出せなくても、“ブラボー”と書かれたタオルを掲げるなどして気持ちを伝えてくださって、“音楽をやっていてよかった”と強く感じました」

豊田「山響が創立以来行っている『スクールコンサート』ですね。とくに阪さんが指揮をしてくだる際はいつも新しい発見があります。オーケストラから自然に音がひき出されて、弾きなれた曲に違う輝きがでてくることにとても驚き、感動しました」

常盤「はじめて参加した定期演奏会です。終演後、ロビーでお客様と直接やりとりをさせていただくこともでき、それがとても嬉しかったですし、いまでもそのときのことが忘れられません」

今後も様々な工夫が凝らされた公演が予定されているが、最後に団員の皆さんにとっての楽しみな公演について尋ねた。

太田「8月の『91歳の巨匠 村川千秋のシベリウス』です。創立名誉指揮者の村川千秋さんの指揮でシベリウスの交響曲第2番などを演奏しますが、以前第3番を振っていただいたときもしびれる体験をしました。今回も“91歳の巨匠”との共演がいまからとても楽しみです」

豊田「7月の『第九』です。アジア各国の歌手がソリストに勢ぞろいし、どうなるのかいまからとても楽しみです。真夏に第九を演奏することってあまりないですし、その点も個人的に注目しています」

常盤「お二人と同じく村川さんとのシベリウス、そして『第九』ですね。とくに『第九』はベートーヴェン全曲演奏の完結編ということもあり、気合が入っています」

山形交響楽団特別演奏会
やまぎん県民ホールシリーズ2024 Vol.2
阪&山響 ベートーヴェン交響曲全曲演奏完結!やまぎん県民ホール初の「第九」

2024.7/21(日)15:00 やまぎん県民ホール

出演
指揮:阪 哲朗
ソプラノ:コ・ヒュナ Hyuna Ko〈韓国〉
メゾ・ソプラノ:ワン・ユーシン Yu-hsin Wang〈台湾〉
テノール:ゴン・インジャ Yinjia Gong〈中国〉
バス・バリトン:平野 和 Yasushi Hirano〈日本〉
管弦楽:山形交響楽団
合唱:山響アマデウスコア
曲目
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調「合唱付き」作品125

第319回 定期演奏会
2024.9/7(土)19:00、9/8(日)15:00 山形テルサホール

出演
指揮:阪 哲朗
トランペット:セルゲイ・ナカリャコフ
管弦楽:山形交響楽団
曲目
山本 菜摘:KODAMA 〜 谺 〜 〈山響委嘱新作・世界初演〉
アルチュニアン:トランペット協奏曲
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調「悲愴」作品74

山形交響楽団特別演奏会
やまぎん県民ホールシリーズ2024 Vol.3
91歳の巨匠 村川千秋のシベリウス

2024.8/10(土)15:00 やまぎん県民ホール

出演
指揮:村川 千秋
ヴァイオリン:周防 亮介
*副指揮:粟辻 聡
曲目
シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ JS 34
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 作品43

問:山響チケットサービス023-616-6607
https://www.yamakyo.or.jp