パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌 2024

札幌の夏の風物詩が今年もやってくる!

 この夏も北海道に世界各国から才能が集う。7月10日から30日にかけて開催されるパシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)では、62の国と地域から1123名もの若き音楽家たちがオーディションを受け、これを突破した85名の精鋭たちがPMFオーケストラとして、豪華教授陣とともに音楽に取り組む。

マンフレート・ホーネック ©Todd Rosenberg

 今回、PMFオーケストラの首席指揮者を務めるのはマンフレート・ホーネック。ピッツバーグ交響楽団の音楽監督を長く務める名匠だ。プログラムはモーツァルトのピアノ協奏曲第22番(独奏はティル・フェルナー)とマーラーの交響曲第5番(7/27, 7/28, 7/30)。ウィーンで学び、ウィーン・フィルでヴィオラ奏者を務めた経験を持つマエストロにふさわしいウィーン・プログラムである。オーケストラの機能性が最大限に求められるマーラーでは、その指導力を存分に発揮してくれるにちがいない。ウィーン出身のピアニスト、フェルナーには端正で格調高いモーツァルトを期待できそうだ。

ティル・フェルナー ©Fran Kaufmann

 客演指揮者を務めるのはドイツ出身のエリアス・グランディ。ハイデルベルク歌劇場とハイデルベルク・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めた気鋭だ。実はグランディはPMFの元アカデミー生。2004年にオーケストラのチェロ奏者として、さらに12年にはコンダクティング・アカデミー生としてPMFに参加した経歴を持つ。かつてのアカデミー生が客演指揮者として帰ってくるのだから、これは音楽祭にとって誇るべき成果といえる。リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」 、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番(独奏はクララ=ジュミ・カン)、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)といった色彩感豊かなプログラムを披露する(7/13, 7/14)。ちなみにグランディは25年4月より札幌交響楽団の首席指揮者に就任することが決まっている。

エリアス・グランディ ©Shervin Lainez
提供:札幌交響楽団

 PMFホストシティ・オーケストラである札響は、やはりPMF修了生である香港出身のウィルソン・ウンを指揮に迎えて、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」ほかを演奏する(7/21)。若き俊英が大きく羽ばたく。

 室内楽公演にはそうそうたる教授陣の名が並ぶ。「PMFベルリン」の公演ではフルートのアンドレアス・ブラウ、オーボエのジョナサン・ケリー、ホルンのサラ・ウィリスらベルリン・フィル勢が、ダンツィの木管五重奏曲 op.56-2やヒンデミットの小室内音楽 op.24-2ほかをとりあげる(7/4, 7/11)。「PMFウィーン演奏会」にはライナー・キュッヒル、ダニエル・フロシャウアーら、ウィーン・フィル勢が登場(7/12)。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第15番、ブルッフの弦楽八重奏曲ほかからなる聴きごたえ十分のプログラムを組む。「PMFアメリカ演奏会」では北米メジャー・オーケストラの首席奏者たちが集まって、ブラームスのクラリネット五重奏曲ほかで妙技を披露する(7/25)。

 恒例のピクニックコンサート(指揮:ホーネックほか、7/27)や公開マスタークラス(7/23)も開催される。盛りだくさんのラインナップが札幌の夏を彩る。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年7月号より)

2024.7/10(水)〜7/30(火) 札幌コンサートホール Kitara、札幌芸術の森、函館、苫小牧、江別、帯広、奈井江、東京 他
問:パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会 011-242-2211
https://www.pmf.or.jp
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。