第29回 宮崎国際音楽祭

南の春の風物詩、今年は多彩な会場で魅せる!

 29回目を迎えた「宮崎国際音楽祭」が、4月29日から5月19日まで開催される。今年は、宮崎市のメイン会場・メディキット県民文化センターが休館中のため、県内6市4町を会場にした、初の広域開催となる。また、当初から関わってきたヴァイオリニストの徳永二男が、今回限りで音楽監督を退くとのこと。その思いのこもった公演も注目ポイントとなる。

 まず宮崎市内では3公演が開催される。1つ目の「エクスペリメンタル・コンサート 『クラシックの20世紀』〜どこから来て、どこへ行くのか〜」(5/5)は、作曲家&ピアニストの野平一郎の監修で、激動の世紀におけるクラシック音楽の変遷を世相とともに振り返り、未来を問う公演。ビートルズ等にも触れる内容、実力者が揃う演奏陣ともに極めて興味深い。

上段左より:徳永二男 ©ヒダキトモコ/野平一郎 ©YOKO SHIMAZAKI/ミッシャ・マイスキー ©Andrej Grilc
下段左より:リリー・マイスキー ©Andrej Grilc/サーシャ・マイスキー ©Andrej Grilc

 2つ目「マイスキー・トリオ『親子で奏でるアンサンブル』」(5/12)では、チェロの世界的巨匠ミッシャ・マイスキーと、娘のリリー・マイスキー(ピアノ)、息子のサーシャ・マイスキー(ヴァイオリン)によるファミリー・トリオが、息の合ったアンサンブルを聴かせる。ブラームスの三重奏曲第3番をはじめとする多彩なプログラムも魅力十分だ。

 3つ目は「マイスキー×宮崎国際音楽祭管弦楽団 『新世界の協奏曲、そして至高の交響曲』」(5/19)。マイスキーとエネルギッシュな名指揮者・広上淳一、そして国内のコンサートマスターや首席奏者が居並ぶ超豪華なオーケストラが、最終日を華やかに飾る。マイスキーが弾くドヴォルザークのチェロ協奏曲では情感豊かな極め付きの名奏、ブラームスの交響曲第1番では唯一無二の重層的サウンドと熱い高揚感を堪能できること必至!

上段左より:広上淳一 ©Masaaki Tomitori/亀井聖矢 ©Yuji Ueno/ライナー・キュッヒル ©Winnie Küch
下段左より:三浦一馬 ©日本コロムビア(株)/三浦文彰 ©Yuji Hori

 徳永監督絡みで目を引くのが、都城公演の「二人の俊英、二人の巨匠 『響き合う音の世界』」(5/11)だ。前半は徳永や大人気の俊才ピアニスト・亀井聖矢らが室内楽を聴かせ、後半は、活躍顕著なバンドネオンの三浦一馬が、ウィーン・フィル元コンサートマスター、ライナー・キュッヒル率いる室内オーケストラとピアソラ等を披露。1粒で2度美味しい内容が食指を動かす。

 このほか、西都公演の「三浦文彰の『リクエスト・コンサート』」(5/3)では、世界を舞台に活躍するヴァイオリニスト・三浦が、事前に募集したリクエスト曲を中心に愉しいひとときを提供。日南公演の「『NADESHIKO弦楽八重奏団』—モーツァルトからスター・ウォーズへ—」(5/4)では、第一線の女性弦楽器奏者8人が、トークも交えて美しいアンサンブルを奏でる。さらに、日向公演の「シリーズ『Oh!My!クラシック』 舞の海秀平は語る〜技、そして音楽」(5/6)では、相撲と音楽がクロスし、延岡公演の「シリーズ『ポップス・オーケストラ in みやざき』 もう一度聴きたい、想い出のあの曲をオーケストラで」(5/18)では、懐かしの名曲を広上&音楽祭管のゴージャスなサウンドで味わえる。

 以上の有料公演以外に無料プログラムもあるし、4つの町を初訪問する「徳永二男『ふれあいキャラバン・コンサート』」等々、実にバラエティ豊か。今回は、地元の方はもとより、遠方のファンも新鮮な場所で音楽を楽しむまたとない機会となる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年5月号より)

2024.4/29(月・祝)~5/19(日) 県内公立文化施設 他
問:宮崎国際音楽祭事務局0985-28-3208 
http://www.mmfes.jp
※各公演、チケット発売状況の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。