今年もゴールデンウィークの金沢で音楽祭が開催される。「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」から「ガルガンチュア音楽祭」に名称を変更して新たなスタートを切る。今回のテーマは「大西洋をわたる風」。イギリスとアメリカに焦点を当てる。
文:飯尾洋一
音楽祭はゴールデンウィークの金沢の風物詩だ。今年より名称が「ガルガンチュア音楽祭」と改められ、ぐっと覚えやすくなった。期間は4月28日から5月5日まで。中心となるのは5月3日から5日までの3日間の本公演だ。石川県立音楽堂のコンサートホール、邦楽ホール、交流ホールに加えて、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホールを舞台に、多数の公演が午前から夜まで集中的に開催される。多くの公演は50分程度の長さなので、一日に何公演もはしごすることが可能。入場料収入の5%は能登半島地震の義援金にあてられ、復興支援にも取り組む。
新生「ガルガンチュア音楽祭」は3つの柱を掲げている。一つは「ミート・ザ・クラシック!」。国内外のトップレベルのアーティストたちを招いて、クラシックの名曲を演奏する。二つめは「ザッツ・エンタテイメント!」。エンタテイメント色あふれるプログラムを提供し、世代を超えて楽しんでもらうことを狙う。三つめは「エンジョイ・フェスティバル!」。リクエスト企画から市民オーケストラや吹奏楽、ジュニアオーケストラの祭典など、市民参加型のプログラムが盛り込まれる。クラシック音楽を核としながらも幅広いジャンルの音楽もあつかい、アマチュアにも門戸を開くのはこれまでと同様だ。熱心なクラシック音楽ファンだけではなく、幅広い人々に興味を持ってもらえる音楽祭になっている。
音楽祭の今年のテーマは「大西洋をわたる風〜イギリス、アメリカの音楽〜」。イギリス、アメリカのクラシック音楽はもちろんのこと、ミュージカルやジャズ、さらには映画音楽もとりあげる。
注目公演を挙げてみよう。まずはイギリスから来日するオックスフォード・フィルハーモニー管弦楽団が、創設者である音楽監督マリオス・パパドプーロスの指揮で、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」他を演奏する[C22]。メンデルスゾーンがスコットランドに旅した際に着想したこの傑作を、イギリスのオーケストラで聴く貴重な機会だ。同楽団は1998年に創設されたオーケストラ。録音にも意欲的で、CHANDOSやBISレコードからアルバムをリリースしている。
オックスフォード・フィルが大西順子と共演するガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」も聴きものだ[C21]。日本を代表するジャズピアニスト、大西順子の「ラプソディ・イン・ブルー」といえば、かつて小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラと共演したことが思い出されるが、今回もジャズトリオを組んでの共演となる。指揮を務めるのは沼尻竜典。この音楽祭では来日オーケストラを日本人が指揮し、日本のオーケストラを来日した指揮者が振るといった交流が珍しくない。
オーケストラでは関西の雄、大阪フィルの参加も話題を呼びそうだ。次代のホープとして注目を集める太田弦が、グローフェの組曲「グランド・キャニオン」を指揮する[C23]。アメリカの大自然が色彩感豊かなオーケストレーションによって描かれる。ほかに大阪フィルは松本宗利音指揮によるホルストの組曲「惑星」[C24]、板倉康明指揮によるジョン・ウィリアムズの『スター・ウォーズ』他の映画音楽[C31]を演奏し、音のスペクタクルを堪能させる。
もちろん地元オーケストラ・アンサンブル金沢も八面六臂の活躍を見せる。純クラシック作品に加えて、松井慶太の指揮と宮川彬良のトークによる「OEKでめぐるアニメの歴史」[H13]や広上淳一指揮による「ビートルズ&カーペンターズ in OEK×国府弘子」[H23]など、バラエティ豊か。
ほかにも「菊池洋子&アビゲイル・ヤングの室内楽」でのヴォーン・ウィリアムズのピアノ五重奏曲[A12]や、「HIMARl×吉田恭子DUO」の母娘ヴァイオリニスト共演[H22]、ソプラノの中嶋彰子と能舞の渡邊荀之助のジャンルを超えた共演[H14]など、多彩な企画が目白押しだ。たくさんの発見と喜びが待っている。
(ぶらあぼ2024年5月号より)
【information】
ガルガンチュア音楽祭2024 「大西洋をわたる風~イギリス、アメリカの音楽~」
会期:4/28(日)~5/5(日・祝) [本公演]5/3(金・祝)~5/5(日・祝)
会場:石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホール、北陸エリア(福井・石川・富山)
問:ガルガンチュア音楽祭実行委員会事務局076-232-8113
https://www.gargan.jp
※本文内の[ ]は公演番号です。各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。