調布国際音楽祭2024の概要発表

将棋とのコラボイベントも開催!

 調布国際音楽祭(主催:公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団、調布市)の記者会見が2月29日、調布市グリーンホールで行われた。2013年にスタートし、桐朋学園大学が立地する街の初夏の風物詩として定着した感のある当フェスティバル。今年は、6月15日から23日まで、京王線調布駅近くのグリーンホールと文化会館たづくりをメイン会場に、市内各所で開催される。

左より)森下唯、鈴木優人、鈴木雅明

 会見は、エグゼクティブ・プロデューサーの鈴木優人、アソシエイト・プロデューサーの森下唯の2台ピアノによる『ゲゲゲの鬼太郎』テーマ曲(いずみたく作曲/森下唯編曲)の演奏でスタート。

 調布で育ち、指揮者・鍵盤奏者・作曲家として音楽祭を牽引してきた鈴木優人は、これまでを振り返って「この音楽祭をきっかけに調布という街を知らなかった方がたくさん訪れてくださっていて、音楽が仲立ちとなって、いろんな人を繋いでくれている。それが音楽の果たすべきひとつの役割」と手応えを感じている様子。今年のテーマ MUSIC WITHOUT BORDERS は「紛争や分断が絶えない世の中であっても、せめて音楽で繋がっているという望みを持ち続けようではないか、という音楽祭からのメッセージ」であるとし、次のように述べた。
「政治に関して音楽家ができることは本当に少ないですが、小さな平和を生み出すことはできる。今日も森下くんと向かい合って演奏しましたが、これも一つの平和なのかもしれません。“アンサンブル”というのは、フランス語で『一緒に』という意味ですが、これは僕の大好きな言葉。一緒にやっていくということが、小さな組織での平和を生むのではないかと思っています」

 鈴木優人の小学校時代の同級生でもあるピアニストの森下も、共に音楽祭の成長を見届けてきた。
「音楽祭というのは、音楽の持つ力を社会のために生かすという側面と、音楽の中身をどういうふうに届けていくかという側面と両方ありますが、そのバランスが無理せず同居しているのがこの音楽祭。財団の皆さんもチーム一丸となって考えている様子を目の当たりにして、素晴らしいチームになったなと感じています」

 左肩を負傷し、一部演奏活動を休止中の監修・鈴木雅明も元気に登場、次のように語った。
「音楽には国境はないというテーマが掲げられていますが、先ほど演奏された『ゲゲゲの鬼太郎』の演奏からして、ボーダーを超えている象徴。音楽は生きる糧である──毎年そのことを確認できる素晴らしい機会となっています。市民の方、ボランティアの方とも子どもから大人まで、いろんなレベルでの交流が生まれ、音楽祭を運営していく経験が、また私たちの次のステップ、糧になるという良い循環を生んでいるのではないかと思います」

 以下、この日発表になったプログラムを中心に、6月15日に開幕する音楽祭を概観する。
 せんがわ劇場での「ワークショップ『新しい音楽をつくる』」(6/15)は、今年で3回目となる。桐朋学園大学でも教鞭を執る作曲家の金子仁美と鈴木優人がモデレーターを務め、世界で活躍する細川俊夫、藤倉大の二人も参加。若い作曲家たちとともに、曲づくりの過程を実験も交えながら考えていくワークショップ。今回は主にダンスのための音楽をテーマにするという。作品を提出する作曲家の募集は、3月10日まで。

 6月16日のオープニング・コンサートには、市内にある桐朋学園大学シンフォニック・ウィンズと明治大学付属明治高等学校・中学校吹奏楽班が参加。上野星矢(フルート)、上野耕平(サクソフォン)のW上野も加わり、尾高尚忠のフルート協奏曲やラヴェルの「ボレロ」など変化に富んだプログラムで、鈴木優人らのタクトのもと華やかに幕開けを飾る。

 新しい試みとして注目されるのが、6月21日に行われる「将棋×音楽 スペシャルコラボイベント 駒音に耳をすませて」。クラシック音楽に造詣が深く、自ら作曲も手がけるという佐藤天彦九段、調布出身の女流棋士の香川愛生、若手棋士のホープ、青嶋未来六段が登場する。鈴木・森下両プロデューサーのピアノ、テレビでもおなじみの廣津留すみれのヴァイオリンなどのアンサンブルと棋士たちの対局(?)がどう絡むのか、「来てのお楽しみ」と詳細は明かされなかったが、将棋が大好きというエグゼクティブ・プロデューサーが調整に奔走したという前代未聞の企画となる。

 音楽祭の公式オーケストラで、アカデミー的要素も持つフェスティバル・オーケストラは、コンサートマスターを務める白井圭をはじめ、主要オケの首席クラスのプレイヤーたちが各パートを率い、演奏動画審査によるオーディションを通過した若手メンバーたちとともに綿密なリハーサルを積み、本番を迎える。今年は、鈴木雅明がベルリオーズ「幻想交響曲」を初めて振り、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番のソリストには、人気ピアニスト阪田知樹が登場と、話題性たっぷり(6/22)。団員募集の期間は3月20日から4月18日までだが、オフィクレイド・パートの募集には「セルパン/オフィクレイド/チューバのいずれか」と書かれており、この分野の第一人者、橋本晋哉のもと、「幻想」の“本当の響き”を探る貴重な機会ともなっている。
 「まさか『幻想』を指揮することになろうとは夢にも思わなかった」と笑う鈴木雅明だが、「フェスオケは既成のオーケストラのように先生が若い人にレッスンをしていくだけでなく、お互いに意見をぶつけ合いながら新しい道を探る楽しい企画。リハーサルにはディスカッションタイムも設けている。音楽史の中の実験(的な作品)、そして現代における私たち演奏の実験的な要素を重ね合わせながら、非常に画期的な音楽が生まれるのではないか」と期待を寄せた。

 すでに1月に発表になっていたプログラムでは、鈴木優人がNHK交響楽団を振り、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲でファウストの妙技を堪能できる「鈴木優人×イザベル・ファウスト」(6/23)が目玉公演のひとつ。また、レジデント・オーケストラとも言えるバッハ・コレギウム・ジャパンは、鈴木雅明の指揮で「音楽の捧げもの」やブランデンブルク協奏曲、管弦楽組曲と、オール・バッハ・プログラムで音楽祭の掉尾を飾る。

 その他、緑に囲まれた名刹・深大寺本堂でのバロック・チェロ上村文乃らのコンサート(6/19)、フェスティバル・オーケストラで講師を務める名手たちによるシューベルト「ます」(6/20)、村治佳織&村治奏一 姉弟によるデュオ(6/20)、名実ともに日本を代表するソプラノ、森麻季のリサイタル(6/21)なども予定されている。また、「次世代への継承」という音楽祭の理念を反映し、常連の栗コーダーカルテットと、廃品打楽器のプレイヤー山口とものユニークな顔合わせによる「子どもスペシャル!」(6/22)などキッズ向け公演も充実。屋外やオープンスペースで聴ける無料コンサートも各所で展開され、ファミリーで気軽に参加しやすい配慮もなされている。

 チケットは、ちょうふアートプラス会員先行発売が4月4日、一般発売は4月11日の予定だが、音楽祭支援の意味を込めた寄附付きチケット&スポンサーシートがすでに先行販売されており(3月22日までの期間限定)、特に完売が予想される人気公演については、こちらを狙うのもおすすめ。例年以上にパワーアップした感のある今年の調布国際音楽祭。子どもからコアなクラシックファンまで、たっぷりと楽しめる9日間となりそうだ。

Information
調布国際音楽祭2024
2024.6/15(土)~ 6/23(日)
https://chofumusicfestival.com

ちょうふアートプラス会員先行発売:4/4(木)9:00~
一般発売:4/11(木)9:00~
※会員・一般ともに発売初日はインターネット販売のみ

寄附付きチケット&スポンサーシート募集
募集期間:2/29(木)~3/22(金)
https://donation.chofu-culture-community.org/collections/mfes-2024-support

ワークショップ「新しい音楽をつくる」Vol.3 作曲家募集
申込期間:2/10(土)~3/10(木)
https://chofumusicfestival.com/JP/News/N7eXN9sT

フェスティバル・オーケストラ団員募集
募集期間:3/20(水・祝)~4/18(木)
https://www.chofu-culture-community.org/events/archives/22445