調布国際音楽祭2024の聴きどころ

MUSIC WITHOUT BORDERS 誰もが楽しめるボーダーレスな9日間

 夏の初めの風物詩・調布国際音楽祭が、今年12回目を迎える。「バッハの演奏」「次世代への継承」「アートの連携」をテーマに掲げて、2013年に始まった同音楽祭は、調布市在住のバッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督、鈴木雅明の監修のもと、エグゼクティブ・プロデューサーに、同楽団でも活躍するマルチな才人・鈴木優人を据え、手作りの感覚とクオリティを両立させたラインナップで毎年開催。年々注目度を増している。6月15日~23日に行われる今年のテーマは「MUSIC WITHOUT BORDERS」。異なる文化や言語の壁を越え、音楽で心がつながる瞬間を体験させる。

鈴木優人 ©K.Miura

♪名物フェスオケの「幻想」、そしてファウスト×N響もやってくる!

 当音楽祭はまず、「ここでしか聴けない」コンサートが大きな魅力。その筆頭格は「フェスティバル・オーケストラ」(6/22)だ。各パートを指導し、トップを務めるのは、国際的に活躍する演奏家や主要楽団の首席奏者など。公募で集まった多様な参加者たちは、一流講師陣のもとで練習を積み、共に本番に臨む。こうして努力を重ねた参加者たちの意欲漲る演奏が1つ目の注目ポイント。それはまさに「この日しか聴けない」ライヴ感に溢れている。

鈴木雅明 ©K. Miura

 そしてもう1つの魅力は、鈴木雅明が普段ほとんど取り上げない作品を指揮すること。今回はベルリオーズの「幻想交響曲」が披露される。同曲は破格の管弦楽法による革新作だが、実は1830年という意外に古い時代の所産。それゆえ古楽の雄・鈴木のアプローチに多大な注目が集まる。また、前半のヴィヴァルディ「調和の霊感」中の協奏曲とベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は鈴木の本領が発揮される演目。後者では、若手世代屈指の実力者・阪田知樹の的確かつ雄弁なピアノ・ソロも満喫できるなど、見どころはさらに多い。

阪田知樹 ©Ayustet

 オーケストラでは、「鈴木優人×イザベル・ファウスト NHK交響楽団 in Chofu 」(6/23)も見逃せない。モダン・オケの指揮者としての実績も際立つ鈴木優人が、日本のトップ楽団を振っていかなる演奏を聴かせるか? プログラムもシューベルトの交響曲第5番をはじめ得意の楽曲ばかりなので期待は大きい。さらにベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲における世界最高峰の名手ファウストのソロは、文句なしに必聴! 曲は、ストレートかつピュアな音で芳醇な音楽を奏でるファウストにピッタリだし、直前のN響定期にはない調布だけの演目ゆえに、ぜひとも耳にしたい。

2022年N響公演より ©K.Miura
イザベル・ファウスト ©Felix Broede

♪古楽界の名手たちによるバロック

 そしてもちろん「バッハ・コレギウム・ジャパン 音楽の捧げもの」(6/23)は、鈴木雅明とバッハの達人たちの真骨頂を堪能できる、外せない公演だ。十八番のブランデンブルク協奏曲第1、3番と管弦楽組曲第4番はもとより、聴く機会が意外に少ない「音楽の捧げもの」の楽曲を耳にできるのが、今回のチャーム・ポイント。ここは、世界で高く評価されるバッハ演奏の真髄を体験したい。

バッハ・コレギウム・ジャパン公演より ©K. Miura

 「ここでしか聴けない」コンサートといえば、「深大寺本堂に響くバロック・チェロ チェリスト上村文乃が今一番弾きたい音楽」(6/19、2回)を忘れてはならない。バッハの生誕と同時期に開かれた深大寺の本堂で音楽を味わえるこの貴重なコンサートも、当音楽祭の名物だ。今年は、モダンとバロックの二刀流で充実した活動を続けるチェロの上村文乃が、リコーダーの菅沼起一、リュートの佐藤亜紀子とともに、古楽の響きを聴かせる。深大寺散策も兼ねて楽しめるこの公演は、唯一無二の時間を過ごす又とない機会となる。

上村文乃 ©Goro Tamura

♪棋士も参戦! さらにパワーアップした企画が展開

 初めて開催される「将棋×音楽 スペシャルコラボイベント 駒音に耳をすませて」(6/21)も大きな目玉。クラシックファンの棋士・佐藤天彦と将棋ファンの鈴木優人がタッグを組むことで実現した「将棋×音楽」のオリジナル企画で、鈴木のほか、同じくピアノの森下唯(アソシエイト・プロデューサー)、ヴァイオリンの廣津留すみれ、フルートの中島章博に、佐藤天彦、青嶋未来、香川愛生の3棋士が出演。一流棋士たちが、盤面によって展開の変わる生演奏の中で、早指し対局や次の一手クイズ、異業種トークバトル等を繰り広げる。いわば、見て、聴いて楽しめるジャンルの壁を越えたお祭り公演だが、具体的な内容は未公表なので、どんなステージになるのか? 興味津々だ。

上段左より:森下唯/廣津留すみれ ©Ryuto Kurokawa/中島章博 ©Leon
下段左より:佐藤天彦/青嶋未来/香川愛生(提供:日本将棋連盟)

 このほか、桐朋学園大学シンフォニック・ウィンズ等が出演する「オープニング・コンサート ~情熱のボレロ!華麗な吹奏楽の祭典~」(6/16)、ヴァイオリンの白井圭、岡本誠司ほか実力者がズラリと揃った「名手たちが奏でる シューベルトの名曲『ます』」(6/20)、人気スターが腕をふるう「村治佳織&村治奏一 ギターデュオ・リサイタル 『夜明け』」(6/20)、「『ある晴れた日に』 森麻季ソプラノ・リサイタル」(6/21)など、垂涎の公演が目白押し。さらには、ワークショップやキッズ公演に、無料で聴ける「ミュージックカフェ」「オープンステージ」「ウェルカムコンサート」といった催しも多々あるので、各自思い思いのスタイルで楽しみたい。

文:柴田克彦
写真提供:調布市文化・コミュニティ振興財団

爽やかな季節に屋外で楽しめるウェルカムコンサートも
毎年大好評の布多天神社での無料コンサート

【Information】
調布国際音楽祭2024
2024.6/15(土)~ 6/23(日) 調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり、調布市せんがわ劇場、深大寺本堂 ほか

おもな公演
◎オープニング・コンサート ~情熱のボレロ!華麗な吹奏楽の祭典~
2024.6/16(日)14:00 グリーンホール 大ホール
◎深大寺本堂に響くバロック・チェロ チェリスト上村文乃が今一番弾きたい音楽
午前の部 6/19(水)11:30、午後の部 6/19(水)14:30 深大寺本堂
◎名手たちが奏でる シューベルトの名曲「ます」
6/20(木)13:00 文化会館たづくり くすのきホール
◎村治佳織&村治奏一 ギターデュオ・リサイタル 『夜明け』
6/20(木)19:00 文化会館たづくり くすのきホール
◎「ある晴れた日に」 森麻季ソプラノ・リサイタル
6/21(金)14:00 グリーンホール 大ホール
◎将棋×音楽 スペシャルコラボイベント 駒音に耳をすませて
6/21(金)18:30 文化会館たづくり くすのきホール
◎フェスティバル・オーケストラ 鈴木雅明の「幻想交響曲」
6/22(土)15:00 グリーンホール 大ホール
◎鈴木優人×イザベル・ファウスト NHK交響楽団 in Chofu
6/23(日)14:00 グリーンホール 大ホール
◎バッハ・コレギウム・ジャパン 音楽の捧げもの
6/23(日)18:00 グリーンホール 大ホール

チケット発売
ちょうふアートプラス会員:4/4(木)AM9:00〜
一般:4/11(木)AM9:00〜
問:チケットCHOFU 042-481-7222 (初日はインターネットのみ)


https://www.chofumusicfestival.com

※全公演の詳細は「調布国際音楽祭」公式ウェブサイトからご確認ください。