ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024 – I トリオ・ヴァンダラー

腕利き3人による精巧に彫琢された音世界

©Marco Borggreve

 それぞれの個性を発揮しつつ、息の合ったアンサンブルも必要とされるピアノ・トリオ。そんな魅力を存分に味わえるのが紀尾井ホールの「ピアノ・トリオ・フェスティヴァル2024」だ。そのトップバッターとして登場するのが、トリオ・ヴァンダラー。パリ音楽院時代に結成されて37年、今やトップ集団となった彼らが紀尾井ホールに26年ぶりに帰ってくる。

 不動のメンバーである、ヴァンサン・コック(ピアノ)、ジャン=マルク・フィリップ=ヴァルジャベディアン(ヴァイオリン)、ラファエル・ピドゥ(チェロ)によるアンサンブルは、とにかく繊細を極める。彼ら3人の精密なバランスによって、柔らかく、そして広がりをもったハーモニーも香り立ってくる。

 今回は、ブラームスのピアノ三重奏曲第1番とシューベルトのピアノ三重奏曲第2番という、このジャンルにおける大曲といっていい2作品が並ぶ。広汎なレパートリーを誇る彼らだが、その持ち味がもっとも発揮されるロマン派プログラムだ。

 ブラームス作品は、後年に改訂した版ではなく、初版を使用。若きブラームスのみずみずしい音楽が、よりデリケートな筆致で描かれるはずだ。一方、シューベルト作品は晩年の傑作の一つ。寂寥たる旋律を交えながら、起伏豊かに細部までくっきりと彫琢された演奏が期待できよう。そして、そのたっぷりとした陰影感をもつ音色にも要注目だ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年3月号より)

2024.6/28(金)19:00 紀尾井ホール 
3/8(金)発売
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp 
https://kioihall.jp