彌勒忠史(ナビゲーター/企画・構成)

オペラをもっと身近に! テーマは替え歌ならぬ替え曲!?

 「同じ食材からどれだけバリエーション豊かなお料理を作ることができるか。そういう楽しみ方の音楽会です」

 横須賀芸術劇場で2001年から続く超ロングラン人気シリーズ「オペラ宅配便」の企画・構成を務める。2月の公演は「替え曲」特集。

 「音楽の授業で、『野ばら』をシューベルトとヴェルナーで聴き比べたことがあると思います。あれと同じコンセプトです」

 つまり、歌詞が同じでメロディが異なる作品の数々。

 「でも私は昭和の時代をマンガとアニメで育ってきた人間なので、発想のもとはシューベルトやヴェルナーでなく、『月光仮面』でして。私が子ども時代に見ていたアニメ版『月光仮面』の主題歌は、白黒時代の実写版と同じ歌詞なのにメロディがまったく違う。それが子ども心にすごくショックだったんですね。

 さらに、数年前にペルゴレージの《オリンピーアデ》というオペラをやったのですが、そのメタスタージオの同じ台本に何十人もの作曲家が《オリンピーアデ》を作曲しているというので、おーっ! となりまして。

 だったら今回、メタスタージオのオペラ台本から同じテキストを切り取って歌詞にしている歌曲を取り上げてみようと考えました。第1部はひとつの歌詞にいろんな作曲家が曲を付けている例。第2部では、ひとつの歌詞に、なんと一人で20数曲の歌曲を作曲したロッシーニの曲をいくつか聴いていただきます。歌うテキストは全部で5つだけなので、お客様にお配りする歌詞対訳が少なくて済みます(笑)」

 つまりテーマの軸は「メタスタージオ」ともいえる。

 「当時のオペラ台本は韻文。それがどれだけ音楽的に整えられているかが重要です。メタスタージオのテキストは、詩を読んだだけでそのまま音楽的なインスピレーションが湧くレベルだったのだと思います。バロックの台本作家を並べて考えてみても、メタスタージオ“1強”といえます」

 出演は田中絵里加(ソプラノ)、秋本悠希(メゾソプラノ)。期待の二人の新人。

 「田中さんはスカラ座の研修所でめきめきと頭角を現し、今はイタリア在住。ボローニャ歌劇場ではヴィオレッタにも抜擢されています。まんまイタリアの声! すごいですよ。今イチオシです。

 秋本さんを初めて聴いたのは日本音楽コンクールの審査でした。当時ロンドンに留学されていて、予選の時から光るものがありました。言葉の扱いがすごく繊細。久しぶりに聴くので、どう進化しているか楽しみです」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2024年2月号より)

オペラ宅配便シリーズ 番外編 NON SOLO OPERA!(ノン・ソーロ・オペラ)
“替え曲”大作戦! ~ひとつの歌詞から生み出される色とりどりの楽曲~
2024.2/25(日)14:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
問:横須賀芸術劇場046-823-9999 
https://www.yokosuka-arts.or.jp