第543回日経ミューズサロン アレッサンドロ・カルボナーレ クラリネット・リサイタル

現代最高の技巧で縦横無尽に吹きつくす

 潤いに富む美音。そして盤石のテクニックに歌心。イタリアの生んだクラリネットの理想形がアレッサンドロ・カルボナーレだ。ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の首席奏者と紹介するよりも、アバドの指揮するルツェルン祝祭管弦楽団やモーツァルト管弦楽団に加わったCD録音や映像ソフトでおなじみの名手と記すほうが話は早かろう。

 日経ホールで開く演奏会は彼の魅力全開である。定番の演目ではストラヴィンスキーの「3つの小品」やプーランクのソナタ。ジャズとの境界線上を自在に遊び回る、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。前衛奏法からクレズマー音楽の語彙まで縦横に吹き分ける、ヴィトマンの「ファンタジー」。羽音を模した走句が4分以上も循環呼吸で途切れなく続くパスクッリの「蜂」や、ジャンルの垣根を越えたロックの奇才フランク・ザッパの作品はまさにカルボナーレの独壇場。この人を聴かずしてクラリネットを語るなかれ!
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2024年2月号より)

2024.2/13(火)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
https://stage.exhn.jp